第一章 霊媒師始まり

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『急募! 霊媒師1名。年齢、学歴、男女不問。経験者優遇。研修期間有り。霊力はあるけど除霊やお祓いは未経験という方、最初は先輩霊媒師と共に現場入りしますのでご安心ください。給与:経験、能力を考慮の上当社規定により優遇。社会保険完備。面接時は本人確認書類をお持ちください。履歴書は不要です。こちらで霊視させて頂きます』 「これなんかどうでしょう?」 30才をすぎ、前の会社が倒産して無職になってしまった僕は職探しに必死だった。 最近では毎日通っているハローワークの相談窓口で、初めて見る男性の老職員が真面目な顔で求人情報を映し出すモニターを指差した。 「はぁ……霊媒師、ですか……。って、ちょっと待ってください。冗談でしょう? 僕の認識が間違っていなければ霊媒師ってお化けや幽霊を相手にする霊能力者の事ですよね? 無理ですよ。僕に霊感はありません、いたって平凡な男です。それにしても最近の霊媒師は会社に所属するのか……てっきりお寺や神社の関係者の方がされるのかと思ってました」 そんな会社があるのかと少々驚いたものの、霊媒師? いやいや、僕には関係のない業種だ。 もっとこう普通の仕事はありませんか? そう聞こうとしたのに、老職員は嬉々として説明を続けた。 「確かにお寺や神社の方が霊媒師も兼ねている、というのは多いですね。ですが、それより増えてきてるのがフリーの霊媒師です。フリーと言えば聞こえは良いですが、規定がないので料金もスキルも人によってバラバラで、運が悪ければ低スキル、高料金といったハズレ霊媒師に当たる事があります。もちろん中には素晴らしいフリー霊媒師もいますけどね」 「はぁ…」 と、しか答えられず曖昧に笑ってみる。 この話はまだ続くのだろうか? 「さて、ここであなたに問いたい。もしも今、あなたが霊障で困っていたとしたら、ハズレではない良い霊媒師をどうやって探しますか?」 や、やっぱり続くのか。 気の弱い僕は、そんな話よりも事務職か営業職を紹介してくださいとも言えず、とりあえず無難な答えを返すことにした。 「さ、さあ……フリーの霊媒師は当たり外れがありそうなので、お寺か神社に相談すればいいのではないですか……?」 「それも一つの手です。では、お寺や神社に頼んだとして、料金はいくらかかるのでしょうか? 頼んだらどのくらいで来てくれるのでしょうか? もし、祓いきれなかったらまた来てくれるのでしょうか? その場合、後から追加料金はかかるのでしょうか?」 老職員の質問攻めに僕はたじろいだ。 そんなこと考えたことないよ。 「えっ……どうなんでしょう? 僕にはわかりません、」 打っても響かない僕の回答に機嫌をそこねるかと思ったが、老職員は気にする様子もなくこう言った。 「わからないですよね。依頼時に詳しく聞ければいいですけど、お金の事ってどうにも聞きにくいって方も多いですし。大体お祓いなんて、どこからどこまで料金が発生するかなんて素人では予想できませんよ」 「そうですねぇ……」
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