第七章 霊媒師休日

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◆ 僕の住むアパートから最寄駅は2つ。 1つは徒歩5分という近さにあるFM駅。 駅前にはコンビニとラーメン屋しかない寂れっぷりだけど、今のアパートに決めた理由の9割はこの駅までの近さにある。 前の会社では残業で終電になる事が多かった。 仕事で神経をすり減らし気力も体力もゼロに近い中、駅からさらに20~30分歩いて帰るのは拷問に等しい。 月に数回午前様になれば、瀕死のサラリーマンはついフラフラとタクシー乗り場に向かってしまう。 深夜料金。 これも積もれば安くはない、だったらいっそ、その安くない交通費分を家賃にあてて駅近のアパートに住んだ方がいいのではないか……と、探し回ったのが今の部屋。 駅から距離のある物件に比べたら少々割高になるけれど、必要経費だと思って納得している。 もう1つの最寄駅は、ゆっくり歩いて15分程の場所にあるF駅だ。 こちらはF駅と違って、駅ビルをはじめファッションビルが建ち並び、休日にもなればショッピングを楽しむ若者で溢れかえる賑やかさだ。 近くには大きな神社があり、お正月には初詣の参拝者で長い長い列ができる。 参拝が終われば、そのまま初売りへと流れ込むのがお決まりのコースだ。 そして、なんといっても僕が愛してやまない”sweets&cafe☆bebe”も駅ビルの1階に入ってるんだ! よし、今日はのんびり歩いてF駅方面に出かけよう。 ベベの前に神社に行ってお参りして、おみくじなんかも引いちゃおうかな。 たくさん歩くぞ、という事で玄関では迷う事無くスニーカーを選んだ。 そしてワンショルダーの斜め掛けバックを掴みドアを開ける。 やっぱり、まだ少し肌寒い。 今日の僕はジーンズにグリーンのシャツだけの軽装だ。 だけど大丈夫、歩いてたらそのうち丁度良くなるだろう。
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