第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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こちらからお店を訪ねる____ という当初の予定と違ったものになったけど、今、僕らの前には愛華さんが立ってる。 その距離目測2メートル弱、すぐ目の前だ。 「……みぃちゃん、……ねぇ、みぃちゃんでしょう?」 愛華さんは震える声で繰り返し、一歩、また一歩と前に出ながら僕の後ろを覗き込む。 水渦(みうず)さんは返事をしなかった。 僕の手を握ったまんま、身を固くして息を殺しているようだ。 怖いんだろうな、……だから返事も出来ないでいる。 でも……でもさ、お姉さま、すぐに気づいてくれたじゃない。 ”みぃちゃん” って、水渦(みうず)さんの事でしょう? 薄暗い道端で、僕の後ろに隠れているのに、離れてから5年も月日が経っているのに……それでも、すぐに気づいてくれたじゃない。 お姉さまも同じ気持ちでいたんだよ。 妹に会いたいと、そう願っていたんだよ。 だからお願い、勇気を出して。 「水渦(みうず)さん、」 そっと後ろを振り返り、小さな声で名前を呼んだ。 が、水渦(みうず)さんは激しく首を振るだけで、声を出す事も、顔を上げる事もしなかった。 どうしたものか……このままじゃあ、せっかくこんなに近くにいるのに、話すら出来ないよ。 僕は途方に暮れかけて、とりあえず、水渦(みうず)さんの震える背中をさすっていると…… 「……あのぉ、」 もうだいぶ近くまで来た、愛華さんが僕に話しかけたんだ。 「は、はい!」 ちょっぴり慌てて返事をすると、愛華さんは僕の後ろをしばらく見つめ、そのあと、僕の目を見てこう言った。 「あの、あなたの後ろにいるのは……みぃちゃ、……あ、……んと、小野坂水渦(みうず)ですよね……?」 ”みぃちゃん” と言いかけた愛華さん。 額には玉の汗を浮かべてる。 「はい、小野坂水渦(みうず)さんで間違いないです。……あ、申し遅れました。僕は岡村英海(ひでみ)と申します。水渦(みうず)さんと同じ会社の後輩です。…………あの、さっきはお騒がせしてすみませんでした。僕達、今日はあなたに会いに来たんです。水渦(みうず)さんのお姉さま、愛華さんに、」 僕が言うと、愛華さんは唇を震わせた。 一瞬で涙が溜まり、瞬きするたびボタボタ下に落ちていく。 「そぉ……そぉなのぉ……そうなんだぁ……や、やっぱりぃ、みぃちゃんだったんだぁ……」 次から次へと溢れ出す、涙を両手でゴシゴシ拭って愛華さんはクシャリと顔を歪ませた。 そしてもう半歩。 前に出た愛華さんは、妹が顔を出すのを待っている。
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