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「水渦さん、」
僕は、僕の後ろで固まっている、水渦さんに呼び掛けた。
振り向けば、……はは、愛華さんとおんなじだ。
唇を震わせてクシャリと顔を歪めてる。
ボロボロ泣いて、涙の雫が瞬きするたびボタボタ下に落ちていく。
「水渦さん、大丈夫、大丈夫だよ。怖くない、平気だよ。お姉さまが待っている、」
僕の手をギュッと握って見上げる顔は、頼りなくて情けなくって、ただのか弱い女の子だ。
お姉さまに会いたいクセに、顔を近くで見たいクセに、グズグズ泣いてそれが出来ずに固まっている。
あと少し、ほんの少しの勇気が出れば、ココからちょこんと顔を出せば、お姉さまに会えるんだ。
「水渦さん、頑張って、だいじょうぶ、ダイジョウブ、」
短い髪を撫ぜる、丸い背中をさする、すぼめた肩を叩く、……どうにかこうにか勇気を出してほしくって、だけど無理はさせたくなくて。
だいじょうぶ、お姉さまは待っててくれてる。
だからゆっくり、彼女の背中を優しく押せたら……そう思っていた____
____と、そこに。
テチテチテチと白くてふわふわ。
お餅界のプリンセス、大福姫がやってきた。
さっきまで、長い話にお姫は飽きて丸くなって寝てたのに。
テチテチテチ、
テチテチテチテチテチ、
テチテチテチテチテチテチテチ……タタタタターーーー……タンッ!
えぇ!?
お姫はテチテチ、たっぷり助走をつけたあと。
速度を上げるとタンッと踏み込みジャンプして、空中でクルッと華麗に半回転。
で、
ドッチーン!!
ボリュームの、可愛いオシリで水渦さんの背中にアタック!
「きゃっ!!」
推定6キロ。
ダイナマイトな猫又ボディが、水渦さんを強制的に押し出した。
「……ね、猫又……?」
背中をさすり独り言ちた水渦さん。
ふと、顔を上げれば、至近距離でお姉さまと目が合った。
「みぃちゃん……」
ボロボロに泣きながら笑顔を向ける愛華さん。
水渦さんはビクッと身体を震わせて、だけどそこから動かずに、そして……
「………………姉ちゃん……」
2人は時が止まったように……見つめ合っていた。
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