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◆
彩さんと商店街のみなさんが帰ったあと。
「さぁ、2人とも。遠慮しないで入ってぇ」
愛華さんはそう言いながら、お店の、【ラブフラワー】の格子の扉を開けたのだが。
「あ、あの!」
先に入る愛華さん、その背中を僕は慌てて呼び止めた。
だって……ねぇ。
”2人とも” と、僕も一緒に呼ばれたけども、彩さんの言う通り、5年ぶりの再会なのだ。
つもる話もあるだろうし、家族水入らず……が良いじゃない。
それなのに、ココに他人の僕がいたらジャマになってしまうもの。
「あの、僕はこれで失礼します。やっとの事で会えたんだ。このあとは姉妹だけでゆっくり語らってください」
手短にそう言って、僕はそのまま帰ろうとした。
だがそれを姉妹2人に止められた。
「ま、待ってぇ!」←愛華さん
「ま、待って!」←水渦さん
前から(愛華さん)横から(水渦さん)ガッチリ掴まれ身動きが取れない。
や、水渦さんはともかくとして、愛華さん……力強いな。
振り向いた愛華さんは、……愛華さんは……その……そう、……とっても身体が大きいのだ。
水渦さんから見せてもらったスマホの写真。
5年前の愛華さんと今の愛華さんでは別人のように違う。
写真に写る愛華さんはほっそりとした美人さん。
目の前の愛華さんはふくよかな美人さん。
この5年で大いなる進化を遂げた。
愛華さんを探す為、霊視を僕はしたんだけども、順を追って視ていくうちにどんどん丸さが増していき、そのペースの速さから途中、もしかして身体のどこかに悪い所があるのでは……? と心配になったくらいだ。
でも大丈夫。
悪い所はないようでいたって健康。
だからこそ、これだけ力が出るのだろう(頼もしい!)。
身体の調子は問題無いし、細くても丸くても優しい笑顔は変わらない。
水渦さんが僕の手をギュッと握って、激しく首を振っている。
目がマジだ、”まだ帰るな” と ”1人にするな” と言っている。
ちょっと、水渦さんともあろう人が、なにを弱気になってんの。
悪霊がわんさかいるよな現場でも、嬉々として1人で乗り込むクセしてさ。
水渦さんをジッと見て ”あとはソロで頑張って!” とテレパシーを送っていると(届かなそうだが)、僕の肩をガシッと掴んだ愛華さんがこんな事を言い出した。
「あのぉ、岡村さんもみぃちゃんもぉ、おなか、すいてない?」
…………え?
再会のこの流れで、なんでいきなりおなかの話?
と思った次の瞬間。
ググーーーゥ!←水渦さん
ギュルルーー!←僕
僕らのお腹が盛大に鳴り出した。
ア、アウチ……!
そうだった、2人とも夕ご飯を食べてないのだ。
思い出したら急におなかがすいてきて、鳴ったお腹にモジモジしてると……
「やっぱり! そんな感じがしたんだぁ! 待ってて、すぐに作ってあげる! 肉じゃががあるから……それから、お魚でも焼こうかな。ねぇ2人とも、ホッケは大丈夫?」
弾む笑顔の愛華さんに、僕らは揃ってヘドバンを披露したのだ。
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