第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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◆ 彩さんと商店街のみなさんが帰ったあと。 「さぁ、2人とも。遠慮しないで入ってぇ」 愛華さんはそう言いながら、お店の、【ラブフラワー】の格子の扉を開けたのだが。 「あ、あの!」 先に入る愛華さん、その背中を僕は慌てて呼び止めた。 だって……ねぇ。 ”2人とも” と、僕も一緒に呼ばれたけども、彩さんの言う通り、5年ぶりの再会なのだ。 つもる話もあるだろうし、家族水入らず……が良いじゃない。 それなのに、ココに他人の僕がいたらジャマになってしまうもの。 「あの、僕はこれで失礼します。やっとの事で会えたんだ。このあとは姉妹だけでゆっくり語らってください」 手短にそう言って、僕はそのまま帰ろうとした。 だがそれを姉妹2人に止められた。 「ま、待ってぇ!」←愛華さん 「ま、待って!」←水渦(みうず)さん 前から(愛華さん)横から(水渦(みうず)さん)ガッチリ掴まれ身動きが取れない。 や、水渦(みうず)さんはともかくとして、愛華さん……力強いな。 振り向いた愛華さんは、……愛華さんは……その……そう、……とっても身体が大きいのだ。 水渦(みうず)さんから見せてもらったスマホの写真。 5年前の愛華さんと今の愛華さんでは別人のように違う。 写真に写る愛華さんはほっそりとした美人さん。 目の前の愛華さんはふくよかな美人さん。 この5年で大いなる進化を遂げた。 愛華さんを探す為、霊視を僕はしたんだけども、順を追って視ていくうちにどんどん丸さが増していき、そのペースの速さから途中、もしかして身体のどこかに悪い所があるのでは……? と心配になったくらいだ。 でも大丈夫。 悪い所はないようでいたって健康。 だからこそ、これだけ力が出るのだろう(頼もしい!)。 身体の調子は問題無いし、細くても丸くても優しい笑顔は変わらない。 水渦(みうず)さんが僕の手をギュッと握って、激しく首を振っている。 目がマジだ、”まだ帰るな” と ”1人にするな” と言っている。 ちょっと、水渦(みうず)さんともあろう人が、なにを弱気になってんの。 悪霊がわんさかいるよな現場でも、嬉々として1人で乗り込むクセしてさ。 水渦(みうず)さんをジッと見て ”あとはソロで頑張って!” とテレパシーを送っていると(届かなそうだが)、僕の肩をガシッと掴んだ愛華さんがこんな事を言い出した。 「あのぉ、岡村さんもみぃちゃんもぉ、おなか、すいてない?」 …………え? 再会のこの流れで、なんでいきなりおなかの話? と思った次の瞬間。 ググーーーゥ!←水渦(みうず)さん ギュルルーー!←僕 僕らのお腹が盛大に鳴り出した。 ア、アウチ……! そうだった、2人とも夕ご飯を食べてないのだ。 思い出したら急におなかがすいてきて、鳴ったお腹にモジモジしてると…… 「やっぱり! そんな感じがしたんだぁ! 待ってて、すぐに作ってあげる! 肉じゃががあるから……それから、お魚でも焼こうかな。ねぇ2人とも、ホッケは大丈夫?」 弾む笑顔の愛華さんに、僕らは揃ってヘドバンを披露したのだ。
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