第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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「良かったぁ! 愛華、2人の為に愛情込めて造りまぁす! ささ、カウンター(ここ)に座って待っててぇ!」 バチン! と僕らにウィンクひとつ。 カウンターの向こう側、くぐった先の厨房で愛華さんはクルクルと動きだす。 ボッ!  とコンロに火を着けて、鍋の中身を横目で見ながら慣れた手付きで野菜を刻む。 まな板がリズミカルに音を立て、それに合わせて鼻歌が混じり出す。 長ネギきゅうりにミョウガに生姜、最後に大葉を刻んだら、まな板は一旦置いてお次は手のひら、そこで豆腐を切り出した。 それらが終わると観音開きの冷蔵庫から、タッパと瓶と調味料、色んな物を出して使って元の場所に戻してく。 ほどなくして、ホッケの焼ける良い匂いがしはじめた。 途端、僕らのお腹はさらにグーグー鳴り出して…… 「あー! 今の音はみぃちゃんかな? それとも岡村さんかな?  待っててね、あと少しだから! さぁて、これで……ヨシ! お待たせぇ! 愛華の愛情ごはん、どうぞ召し上がれ!」 早っ! もう出来たの!? ニコニコ笑う愛華さんからカウンター越し。 手渡されたお盆には、ホッケの塩焼、肉じゃがに冷奴、キュウリの漬物と味噌汁が載っていた。 どれもこれも出来たてホヤホヤ。 ほかほかと湯気が立ち、ナニコレめちゃくちゃ美味しそう! 「うっわーーー! ありがとうございます、すごいご馳走だぁ!」 思わず声が弾んでしまった。 だって本当に美味しそう! 空きっ腹にこのご馳走は幸せすぎるよ! 愛華さんは僕にお盆を手渡したあと、水渦(みうず)さんにも手渡した。 「はい、みぃちゃんも。重いから気を付けてねぇ」 水渦(みうず)さんはコクッと小さく頷くと、両手でお盆を受け取って、所狭しと並んだ料理を黙ってジッと見つめていた。 「いただきます!」←僕(テンション高め) 「………………す」←水渦(みうず)さん(声ちっさ!) 両手を合わせて ”いただきます” と言ったあと、一番最初にお味噌汁をいただいた。 具はきのこ、なめこにマイタケしいたけエノキ、刻んだネギと茗荷と赤味噌、きのこの美味さをより一層引き立てる……ああ、幸せ。 そこから夢中になって食べた。 肉じゃがは、しっかり味が染み込んでるのに有り得ない程ホクホクで、聞けば、水を入れずに野菜から出る水分のみで煮込めば良いと教えてくれた。 でもってホッケ、表面はカリッとしてて中身はふんわり。 箸を入れたらすぐにほぐれて湯気が立つ。 醤油のいらないちょうどいい塩加減、香ばしくって白飯を1杯多く食べちゃいそうな、そんなキケンなオサカナだ。 それからナニコレ冷奴。 豆腐の上には細かく刻んだキムチと納豆(ひきわり)、アクセントにすったショウガをひとつまみ、仕上げにクルッとゴマ油が垂らしてあるの。 一口食べれば……ああ、キムチと納豆、自己主張の強い2つをショウガとゴマがウマイ具合にまとめてる。  箸休めはキュウリの糠漬け、これ絶対自家製だ。 いつも食べてる市販のモノとぜんぜん違う、香りも味も食感も、おばあちゃんちで食べたみたいな懐かしい味がする。
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