第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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……ああ、 …………あぁもう………………! 「めちゃくちゃ美味しい……!」 一心不乱に食べ続け、気付けばほとんど完食状態。 いつもの僕なら良く噛んでゴハンはゆっくり食べるのに、あんまりにも美味しいもんで、お箸がぜんぜん止まらなかった。 あったかくて美味しいゴハンに僕はすっかり幸せモードだ。 愛華さんは「おかわりもぉ、あるからねっ!」とニコニコしてて、その笑顔を見ていると、力が抜けて緊張が溶け、気持ちがホッとしてしまう。 ふくよかな丸いお顔は色が白くて赤ちゃんみたいにお肌がツルツル。 邪気がなく裏表もなさそうで、初めて会った僕にも優しい。 無条件で癒される……愛華さんって、陽だまりみたいな女性だな。 優しくて明るくて、そう……水渦(みうず)さんとはまったく違うタイプの人だ。 ふとそんな事を考えて、隣に座る水渦(みうず)さんを見た。 彼女は背中をうんと丸め、俯きながらゆっくりと箸を動かしていた。 お皿を見ると、どれもこれもあまり減っていない。 さっき……ここに来る前、食欲がないって言ってたんだよな……大丈夫かな。 愛華さんは変わらずニコニコ笑ってた。 カウンター越し。 水渦(みうず)さんを優しく見ながら、少しだけ身を乗り出すとこう言ったんだ。 「……みぃちゃん、おいしい?」 「………………ん、」 「そっかぁ、良かったぁ」 「………………ん……」 「みぃちゃん、肉じゃが大好きだもんねぇ」 「………………ん」 「お姉ちゃんねぇ、みぃちゃんの好きなモノ、ぜぇんぶ覚えてるよ。キノコでしょぉ、お豆腐でしょぉ、お魚は煮つけよりも塩焼きが好きなのよねぇ」 「………………ん、……ん、」 あ、……と思った。 今いただいたご馳走はぜんぶ、ぜんぶ水渦(みうず)さんの好物なんだ。 肉じゃがも、塩焼きも、お豆腐も、キノコのお味噌汁も……そういうのを愛華さんは覚えてるんだ。 水渦(みうず)さんは、愛華さんの優しい言葉に呻くように返事をするけど、その呻きさえ震えているから、泣いているのかもしれない。 俯いて、顔はぜんぜん見えないけども、……そう、思った。
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