第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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そんな優しい空気の中。 「ねぇ、みぃちゃん」 愛華さんは言葉短く妹を呼ぶ。 「ん?」 それに対して短く応える水渦(みうず)さんは、僕が今まで見た中で一番穏やかな顔をしていた。 ああ、なんか良いなぁ。 こういう顔も出来るんだなぁ、いや、これが本来の彼女なんだろうな。 しみじみしながら姉妹を傍で見ていると、愛華さんはキリッと真面目な顔になり、こんな事を言い出した。 「みぃちゃん……あのね、……ありがとう。お姉ちゃんを見つけてくれて、会いに来てくれて、本当にありがとねぇ。……さっき、最初にみぃちゃんを見た時、これは夢なの? って、すごく驚いた、夢なら覚めないでほしいって思ったよ、」 愛華さんは ”えへへ” と笑い、妹の髪を撫ぜた。 そして続ける。 「……夢じゃなくて良かった。こうしてみぃちゃんにさわれるってコトは、夢じゃないんだよね。嬉しいなぁ、ホンモノのみぃちゃんだ。……あのね、みぃちゃん。お姉ちゃんね、会えない間ずっと、ずぅぅっと考えていたコトがあるの。大好きなみぃちゃんとまたどこかで会えたら、もう二度と離れない、ずっと一緒にいる、姉妹で、家族でまた一緒に暮らしたいって」 愛華さんは短い髪から手を放し、代わり、妹の頬にふれた。 少し荒れた赤みのほっぺ、それを大事に包み込む。 「だからね、みぃちゃん。お姉ちゃんの家においでよ。古いマンションだけどその分お部屋はあるの。ウチからなら通勤もそう遠くならないでしょう? お姉ちゃん、毎日お弁当作ってあげる。朝も起こしてあげる。夜はお店があるけど、帰ってきたら夜食も作ってあげる。だから、だから……どうかな? 来てくれないかな? お姉ちゃん、もうみぃちゃんと離れたくない、毎日一緒にいたいよ」 白い肌を紅潮させて、愛華さんは一言一言丁寧に、だが力強くそう言った。 水渦(みうず)さんは唇をワナワナ震わせ、目に涙を溜めていた。
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