第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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「…………いいの? ……いいの? 私……また姉ちゃんと暮らせるの……?」 掠れた声でどうにか答えた水渦(みうず)さん、またも涙が溢れ出す。 愛華さんは何度も何度も頷きながら、泣いている妹を抱きしめた。 ああ……そうかぁ……姉妹はまた一緒に暮らすんだ。 同じ屋根の下、昔と同じに笑い合って、いたわり合って、幸せに暮らすんだ。 水渦(みうず)さんはもう独りじゃない。 優しい愛華さんが、たったひとりのお姉さまが一緒だもの。 姉妹を見てたら僕もなんだか泣けてきて、そしてなんだか幸せな気持ちになった。 今夜ここに来れて良かった、霊視頑張って良かった、……と思っていたのだが。 このあと、愛華さんは「もうひとつ、大事な話があるの」と。 さっきよりもさらに真面目な顔をして、妹の手をとった。 「あのね、お姉ちゃんね、……今、一緒に住んでいる人がいるの」 額に汗を滲ませて、愛華さんがそう言った。 「…………え、」 言葉短く、水渦(みうず)さんは姉の言葉に固まった。 愛華さんは妹の手を握って離さず、真っすぐに前を見てこう続けた。 「その人はウチのお店の厨房さんでね、本橋健吾さんっていうの。お姉ちゃん、本橋さんと婚約してるんだよ」 「婚約者……」 赤みの頬がみるみる青く変わってく。 水渦(みうず)さんは明らかに動揺してて、微かに口を噛んでいる。 「そう、婚約者。まだ正式には結婚してないけど……一緒には住んでるの。ごめんね、みぃちゃんと住みたいと言った後にこんな話、びっくりしたよね。……あのね、出来れば……みぃちゃんが嫌でなければ……お姉ちゃん、みぃちゃんと本橋さんと3人で暮らしていきたいの」 愛華さんの額の汗が玉となって噴き出した。 言葉を選んでいるのが分かる、……今のこの状況、5年前に似てないか? 水渦(みうず)さん……大丈夫かな。 彼女はなんて言うだろう。
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