第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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水渦(みうず)さんは黙ってそれを聞いていたが、「はぁ、」と短く息を吐くと、やはり言葉に力を込めてこう言ったんだ。 「本橋さん、あなたが姉を大事に思ってくれているのは良く分かりました。でも、私の事で無理をしなくていいのです。さっき言ってましたよね? 姉に結婚を申し込んだのは2度目だと。なぜ2度目なのですか? 5年前、最初の時も、条件付きではあったけど、姉はそれを受け入れたのでしょう? それなのに結婚しなかった、いいえ、したくても出来なかったんですよね。姉が突然、あなたの前から姿を消してしまったから。姉がいなくなった理由を本橋さんはご存じですか? 私のせいです、私がぶち壊したんです。当時、私は姉の結婚を受け入れられなかった、たった2人の家族で私には姉しかいなかったのに、その姉が結婚したら私は捨てられると思ったんですよ、だから捨てられる前に、すべてを壊してしまおうと姉の職場で暴れたんです、みんな不幸になれば良いと思った、実際全員不幸になった、そういうのぜんぶ、ぜんぶ私のせいなんですよ! 私が! 姉と! あなたの幸せを壊したんです! そんな私を大事になんて思えますか!? 本橋さん……無理をしなくて良いんです」 はぁ……はぁ……、 息を乱して涙目で。 水渦(みうず)さんは誰の口も挟ませないまま言い切ると、カバンを手に持ち店から出て行こうとした。 僕は慌てて後を追うとした、……が、それより先に本橋さんが止めに入る。 「ちょっ待て! 行くな! ダイジョブだ! それ知ってるから! 愛華から聞いたから!!」 大きな声だった、そして口調も崩れてる。 本橋さんは必死に続けた。 「聞いたのは春だ! 水渦(みうず)さん、愛華が働いてたバーに乗り込んだんだろ? 店ん中破壊して墨汁まき散らしたって、そのせいで店にもいられなくなって借金背負って俺の前から消えたんだ。当時は知らなかった、でも今は知ってる、」
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