第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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う、嘘だろ……? なんでそこでパチンコに行くのかな。 仕事をクビなったのに、住む所もなくなったのに、公園に寝泊りするってよっぽどなのに。 追い詰められた状況で、命を繋ぐ大事なお金をギャンブルに突っ込むなんて、正気の沙汰とは思えない。 ”開いた口が塞がらない”……というのを、今まさに実践中の僕でさえ、これだけ唖然としちゃうんだから、水渦(みうず)さんはもっとなんじゃないのかな。 そう思ってチラッと彼女を見てみると、アウチ……やっぱりだ。 険しい顔して眉間にシワを寄せている。 だよなぁ……無理もない。 大事な姉の婚約者さんがオカシナコトを言い出して、”コイツ信用出来るのか?” って、妹なら思ってしまうよ。 水渦(みうず)さんは辛うじて今は黙っているけれど、いつまでもつかは分からない、下手したらキレキャラに逆戻りもあり得る話だ。 その時は僕がなんとかするしかないけど、なんだろ、チョット胃が痛い。 そんな空気を読んでいるのかいないのか。 本橋さんはさらに続けてこう言った。 「本当にばかな事をしたと思う、」 ですよねぇ、 「……今なら分かる、あの時俺が行くべき場所は、パチンコ屋じゃくて職安だった。なんでも良いからまずはどこかで働いて、生活を立て直すべきだったんだ」 あ……うん、ですよね。 本橋さん、今は分かっているんだな、……うん、そうだよね。 色んな不運がありすぎて、マトモな判断が出来なかったんだ。 そんな事を考えながら、僕はコソッと水渦(みうず)さんを盗み見た。 彼女もまた同じように感じているのか、眉間のシワがさっきよりはユルくなってる。 「結局……なけなしの全財産をパチンコに溶かしちまってスッカラカン。おにぎりも買えなくて、腹が減って惨めで惨めで……ま、…………自業自得なんだけど、俺はいよいよ追い詰められていったんだ、」 むぅ……しかもパチンコ、負けてしまったのか……こう言ったらアレだけど、マジでガチで、正気の沙汰とは思えない(2回目……)。 が、それはぜんぶ過去の話だ。 さっきも言ってたじゃない、”ばかな事をした” って。 今はそれを分かっているから、こうして話してくれるんだ、……や、でも、正直に話し過ぎとも思うけど。
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