第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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水渦(みうず)さんはいつもの倍、凄まじい圧を放っていた。 今は黙っているけれど、”絶対に許さない” と、強く目が語っている。 愛華さんは何かをとっても言いたそうにしてたけど、それでも、本橋さんに ”待ってくれ” と言われた事で、グッと辛抱してるみたい。 そしてその本橋さんだ。 彼は拳を握りしめ、脂の汗を滲ませながらこう言った。 「悪い、……もう少しだけ話を聞いてくれ。途中で腹が立ったら何度だって殴れば良い。大丈夫、これに限って言えば暴力でもなんでもない。仕方がないんだ、水渦(みうず)さんが怒るのは当然だから。俺が逆の立場でも同じ事をしたと思う、」 殴っても良いだなんて……そこまでしても話したいのか。 なんでそこまでするんだろう? 水渦(みうず)さんに責められて、叩かれて、愛華さんは泣いてしまって、こんなの、本橋さん自身もキツイはずなんだ。 もちろん、写真をもとに女性を脅す、それは絶対に許されない事だけど……本当にお金をもらったのだろうか……? ……たとえばだけど、僕が本橋さんの立場ならどうするだろうな。 自分のした事、黙ったままでいるのは辛いと思う。 大事な女性の妹にウソなんかつきたくないもの。 でもさ、話の内容が内容だ。 話すにしてもタイミングとか言い方とか、良く考えないとトラブルになるじゃない……そう、まさに今みたいにさ。 本橋さんって……もしかして不器用な人なのかな。 少なくとも器用じゃなさそう、上手く立ち回れる人ではないのかもしれない。 でもさ、水渦(みうず)さんにしてみれば、器用だろうが不器用だろうが、そんな事はどうでもいい話だ。 その水渦(みうず)さんといえば。 冷たい目をして「これ以上話を聞く気は、」と言いかけた。 だが愛華さんの縋るような顔を見ると、チッと小さく舌を打ち、 「手短にお願いします。ですが、いくら話したところで私の気持ちは変わりません。姉と結婚だなんて認めません」 そう言い直した。 本橋さんは「すまない」と小さく言って、額の汗を拭った後に、こう話しだしたんだ。
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