第七章 霊媒師休日

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さ、触りたい……しゃ、写真撮りたい……。 だけど急に触ったりしたらびっくりして逃げちゃうかもしれないぞ。 ここはひとつ、驚かさないように静かに見守ろう。 それでこの仔が水を飲み終えて、僕を見たらゆっくり瞬きして友好の気持ちを伝えるんだ。(※猫はゆっくり瞬きする事で相手に敵意がない事を伝え、争いを避けたり友好関係になったりします) うまくすれば、少しだけ撫でさせてもらえるかもしれない。 たぶん僕の顔は相当だらしなくニヤついていたんだと思う。 白猫が水を飲み終えるのを待つ為、柄杓片手に突っ立ったままの僕を見た通りがかりの参拝者が、まるで可哀そうな人を見るような目線を投げかけてくるからだ。 だけど僕は耐える。 せっかく逢えた白猫だ。 少しでも長く一緒にいたい。 にしても……まだ水飲んでるよ。 この水すごく冷たいし、こんなに飲んでちょっと心配。 んばぁ! といった感じで白猫が水面から顔を上げた。 満足そうにベロンベロンと口のまわりを舐める。 うわ!あのちっちゃいベロ!かわいいなぁ! 更にニヤける僕を、通りがかりの参拝者がギョッとした顔でチラ見する。 くっ、負けてなるものか。 ここまで待ったんだ。 人の目を気にするあまり、慌てて白猫に手を出してピューっと逃げられては元も子もない。 ああ、だけど僕の愛で対象第一位が猫で良かった。 こんな行動、人間の女性にやったら通報モノだ。
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