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途中で何度もつっかえながら、本橋さんは今の思いを伝えてくれた。
額に汗を滲ませながら言葉を考え言葉を選び……その姿はすこぶる真剣そのもので、話し終えた今、水渦さんがなんと答えてくれるのか、それを待ってるようだった。
……
…………
………………
たっぷりの沈黙の後。
ここでようやく水渦さんが口を開く。
「言いたい事はそれだけですか？」
短い一言だ。
抑揚のない能面顔で、気持ちがまったく読めてこない。
てかさっき……あれだけ話を聞いたというのに、それに対して返答はないのだろうか？
納得するでも罵倒するでもなく、“それだけですか？” の一言だけって……僕がされたらめちゃくちゃ凹む。
真剣に話した分だけ落ち込むよ。
本橋さん、大丈夫かな……と心配したが、彼のメンタルは予想以上に強かった。
「いや、今ので大体半分だ。話したい事はまだまだある」
えっ！？
全部じゃないの？
半分なの？
けっこうたくさん話してたのに？
で、でもまぁ、それだけ伝えたい思いがあるのだろう……と、僕が密かに思ったコトを水渦さんも思ったみたいで(主に前半)、彼女は露骨に顔をしかめた。
「…………今ので半分？ あれだけ話しておいて？ 失礼ですが本橋さん、貴方、話をまとめる力が弱いのではないですか？」
えっ！？（２回目）
言い方……いや、僕は慣れてる。
このくらいの真向否定は通常運転、いつもの事だ。
でもさすがに本橋さんは……と思ったが、
「そ、そうか、悪い。残り半分は、まとめてから話すから」
と前向きだ。
「……まだ話す気ですか？」
「ああ。水渦さんに信用してもらえるように、愛華と結婚しても良いと言ってもらえるように、……俺、何年かかっても頑張るつもりだ」
「……………………」
「それで、いつか信用出来るようになったら、その時は……愛華との結婚を許してほしい」
「……………………」
「それと……さっき愛華が言った事だが、その、愛華と水渦さんと俺と３人で住みたいって。アレは無しだ」
「……………………無し？」
「そう、無しだ。そりゃそうだろう。水渦さんは若い女の子だ。なのによ、いくら姉ちゃんの婚約者だからって、会ったばかりの知らない男と一緒に住むのは嫌だろう。愛華のヤツ、妹にやっと会えて嬉しくて暴走したんだ。不安にさせて悪かったな。だからよ、俺が愛華のマンション出ていくから、水渦さんが代わりに住めば良い。姉妹で暮らすんだ」
「…………貴方は……どこに行くのですか？」
「俺か？ 俺は向かいのアパートにでも引っ越すよ。それならマンションからも店からも近い」
「…………………………」
「あ……近くに住むのもダメか？」
「………………そこまでは言ってません……、」
「そうか！ 良かった！ だったら早い方がいいなぁ。水渦さんが越してきたら、俺、メシ作るよ。もしイヤじゃなけりゃあ、３人でメシ食わねぇか？ ……イヤじゃなけりゃだが……」
「…………………………」
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