第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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「…………………………」 「良かったね、」 「…………私、邪魔をしたのに、」 「うん、」 「2人の幸せ、壊しちゃったのに、」 「……うん、そうかもしれない。でもアナタ、ずっと後悔してたじゃない。ずっと苦しんできたじゃない。ずっと、あやまりたいと思ってて、」 「…………………………」 「今夜、あやまる事が出来たじゃない」 「…………………………」 「たぶん……本橋さんも同じなんじゃないかな。悪い事をしようとしたけど、愛華さんに救われて改心したんだ。彼も悔いてた。だから……これから少しずつ、良い関係を築いていけばいいんじゃないかな。焦らないでゆっくり……本橋さんもそのつもりだから、このオルゴールをくれたんだよ」 「…………………………」 「こんな事を言ったら……また偉そうにって言われちゃうかもしれない。でもね、思うんだ。人って弱いよ。思う程、こうありたいと願う程強くない。だから、仲間や家族でお互い支え合えば、道を外しそうになった時、”コッチだよ” って手を引いてくれる人がいれば、ぜんぜん違うと思うんだ。手を引いてもらって、時には……そう、水渦(みうず)さんも誰かの手を引いてあげるんだ。誰かの支えになるんだよ」 「………………私が……? 誰かの手を……?」 「うん、そうだなぁ。もしかしたら、いつかの未来に僕が道を外しそうになるかもしれない。その時は……水渦(みうず)さんが僕を救ってよ、……なんて、ちょっと図々しかったかな、」 ”ははは” と笑って頭を掻いて、”今のナシ” とおどけてみせた、……が。 水渦(みうず)さんは笑わなかった。 真面目な顔で、僕の目を真っすぐに見て、 「……わかりました。この先、なにがあっても私が貴方を守ります。万が一、貴方が道を外しそうになったら……必ず私が手を引きますから」 こう、言ったんだ。
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