第七章 霊媒師休日

10/20
前へ
/2550ページ
次へ
たっぷりの水に満足した白猫は狭い石甕の縁で器用に方向転換すると、後ろ足を蹴って優雅に地面に着地した。 そしてスタスタと参道のど真ん中を陣取ると、濡れてしまった四足を一本一本丁寧に舐めはじめた。 最初は前足。 これは普通に座った格好で右、左と順番に……なんて優雅なんだ。 次に後ろ足。 今度はドテっと尻というより腰を地につけるように座り、前足を後方について大きな体を支えながらのベロンベロン。 魅惑のアンヨをあっちに曲げ、こっちに曲げながらのベロンベロン。 四足の水分がキレイにとれたところで、お次は後ろ足をⅤ字に開いて、ワーオなポーズでタプタプお腹をベロンベロン。 って、ずいぶんだらしのない格好だ、さっきまでの優雅さはいずこ、あれじゃまるでオッサンみたいな風格だ…… ぷっ。 堪えきれず僕は小さく吹き出した。 同時に白猫は動きを止め、おもむろに小さな顔を上げた。 と、その時、手水舎の前に立ち、参道の白猫とは1mくらいの距離に立っている僕と目線がぶつかった。 チャーンス!! 突如降ってきた幸運に、ここぞとばかり白猫に向かってゆっくり瞬きを繰り出した。 僕は悪い人間じゃありませんよ。 無理に撫でさせてもらおうなんて思っていません。 もしも気が向いたらササっと一撫でさせてもらえれば泣いて喜びます。 でも嫌ならもちろんさわりません。 お腹空いてないですか? もしよかったらひとっ走りペットショップまで行って猫専用おやつを買ってきますけど。 キレイな毛並みですね。 僕はアナタに一目惚れです。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加