第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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その後に聞いたのは普段の食事の事だった。 いつも独りの食卓で、どんな物を食べているのか、その質問をしたのだが…… 「えぇ……ウソだろ?……ウソだと言ってくれ……あまりに食事が偏ってるじゃないか……」 めちゃくちゃ驚いた。 曰く、とにかく食費を切り詰めたくて、”白米と〇〇シリーズ” なるもので週に5日は乗り切ってると言うのだ。 この ”〇〇” に入るのが、”玉子”、”納豆”、”漬物”……以上! だそうで、これにインスタント味噌汁がつくという。 残り2日は決まってカレー。 作るのが簡単なのと、一応野菜が摂れるから……らしい。 あぁ……眩暈がしてきた。 「……ダメですか?」 丸い背中を萎ませて、おずおず聞くのは水渦(みうず)さん。 僕は露骨にため息ついて、 「ダメに決まってんだろ」 バッサリと斬り捨てた。 はぁぁぁぁ……眩暈が止まらん。 白米が悪い訳じゃない。 もちろん、”玉子”、”納豆”、”漬物” も。 タンパク質に発酵食品、身体には良いと思うが偏り過ぎだ。 他にも食べてよ、お肉とかお魚とか、バランス良く食べないとダメじゃない。 今は良いよ、若いから。 でもね、30過ぎると徐々に徐々に……って、まぁいいや。 「なんで? なんでそんなに偏ってるの? 料理するの嫌い?」 半ギレよりもマイルドに、三分の一ギレくらいの剣幕で聞いてみる……と。 「す、すみません。料理は嫌いではないんです。姉と一緒に住んでた頃は交代で作っていましたから。ただ……」 「ただ?」 「節約してお金を貯めたかったんです。……その、いつか姉に返せるように……私のせいで借金を背負わせてしまったから……」 「……あ、」 「……そういう事です。だから私、休みを返上した出勤も多いでしょう? ”人が足りない時は廃休して私が出ます” と、しょっちゅう言ってたのはその為です。出た分だけお金が出るから」 「あ…………、」 そか……ん……そうだったんだ。 地図の事、食事の事、休日出勤の事。 ぜんぶぜんぶ、愛華さんに絡む事だったんだ。 僕はそれを知らないで、今まで、水渦(みうず)さんって変わってる……なんて、勝手な事を思ってて……ああ、本当にごめん。
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