第二十四章 霊媒師 水渦の選択

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落ち込む僕に気が付いたのか、水渦(みうず)さんは身体ごとこっちに向けてこう言った。 「はぁぁ……またどうせ、“ごめん” などと思ってるんじゃないですか? 気にしなくて良いんです。だって、岡村さんは知らなかったし、私が好きでしていた事です。……これからは、地図を見なくても姉本人と会えるのだし、休日出勤も程々にします。……ん、でも先代が困っていたら飛んで行くかもしれませんが」 目尻を下げてにこやかに、僕を見たあとオルゴールに目を落とし、しばらく眺めてもう一度僕を見た。 「あと食事の件ですが、これももう大丈夫です。バランス良く食べる、ですよね。昔、よく姉も同じ事を言っていました。これからはちゃんとした物を食べるつもりです。そうでないと姉に叱られます。大丈夫ですよ、交代で作りますから。私と、姉と、それから…………ハシさんの3人で」 え……? 今……最後がよく聞こえなかったけど、でも、“……ハシさん” って“モトハシさん” って言ったんじゃないのかな。 水渦(みうず)さん、本橋さんを受け入れようとしてるんだ。 不意打ちにすぐに言葉が出てこなくって、僕が数瞬まごついてると、水渦(みうず)さんはサッと立って伸びをした。 「んーーーーーー………………はぁっ、今日は色んな事が有りました。明日の有給、取っておいて良かったです。岡村さん……あのね、色々と……とてもたくさん……本当に……本当にありがとうございました」 ガバッと腰から頭を下げて、水渦(みうず)さんはそのまましばらく動かなかった。 「ちょちょちょっ! なに改まってるの、やめてよ!」 らしくないにも程がある……なんて、失礼なコトを考えながら、慌てて頭を上げさせた時、彼女と僕は至近距離で目が合った。 「「…………あ、」」 声が重なりしばしの沈黙、……の後。 さっきと同じ。 水渦(みうず)さんは力の抜けた子供みたいな笑顔になって「帰ろっか」と言ったんだ。 「え……、う……うん、帰ろっか」 驚いちゃって、なんとかこう答えたけれど……なんだコレ。 僕の心臓が騒いでる……な……なんで? 足取り軽く歩き出した水渦(みうず)さんは、大福にも「帰ろう」と声をかけ、お姫はテチテチ彼女の隣を歩き出す。 僕は1人とイチニャンの、丸い背中をしばらく眺め、 「や、ちょ、だから送る意味! んも、置いてかないでー!」 困ったフリして追いかけた。
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