第七章 霊媒師休日

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パチ……パチ……パチ…… どのくらい瞬きをしていたのだろう。 数十分とも感じる長さだったが、本当は数分だったのかもしれない、が、僕と白猫の距離は相当縮まったかのように思える。 偽香箱座りの僕の数センチのところで白猫が、スンスン鼻を鳴らしながら僕の匂いを嗅いでいた。 最初は僕の身体からはみ出た左右の拳を、そして僕の鼻先を触れるか触れないかギリギリのラインで。 それからクルっと方向を変え、僕の脇腹をスンスンスンスン。 だがそこまでにとどまらず更に進んで後方にまわる……後方? ま……まさか……!僕の予想が正しければ白猫が次に嗅ぐのは……! スニーカーの裏にほんの少しの重みを感じた。 ああ、白猫はあのキュートな前足を靴の裏に乗せているのだろう。 肉球の感触まではわからないけどその重みに愛しさが込み上げる。 そして次の瞬間。 僕の尻を柔らかななにかがつついてきた。 それは不定期なリズムで、ジーンズ越しに、ぽむ、ぽむ、ぽむ、と触れてくる。 同時に後方から、フゴフゴフゴフゴという激しい鼻息音。 明らかに”スンスンスンスン”の上位互換と思われる” フゴフゴフゴフゴ”に僕はパァっと気持ちが華やいだ。 白猫か僕の尻の匂いを嗅いでいる! これは完全に猫界のご挨拶! 最初に鼻や口周辺を嗅ぎ、次に脇腹、そして最後は尻の匂いを嗅ぐ! やった……!やったぞ……! 白猫に尻の匂いを嗅いでもらえた……! これなら白猫をモフモフに撫でまわす事ができるかもしれない!
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