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あぁ……なんてこった。
僕は白猫に憎からず思われていると過信して、調子に乗ってしまったのかもしれない。
行き場のない人差し指をおずおずと引っ込めて、猛省。
僕は自他ともに認める草食男子である。
気になる女性を食事に誘い、「その日はチョット」なんて言われようものなら2度と誘えなくなるよな最弱メンタルの持ち主だが、猫に関してはまわりが引くほどの粘りを見せる。
今日もそれは変わらない。
白猫は鼻挨拶寸前でプイっと僕を振ったけど、決して怖がっている様子はなかった。
今だってすぐ近くで空を見上げる白猫は、たまにチラチラと僕の様子を窺ってくるし、ヒゲはまだ前を向いている。
うん、諦めるのはまだ早い。
2ターン目、ファイッ!
僕はパチ……パチ……瞬きを繰り返しながら、できるだけ甲高い声で白猫に話しかけた。
「シロネコちゃぁん、かわいいねぇ、キレイだねぇ、ツヤツヤだねぇ、」
猫は男性の低い声を嫌う、好くのは女性の高い声。
男性の低い声は、猫がケンカをする時に威嚇で上げる唸り声にトーンが似ているから緊張を強いてしまうと聞いた事がある。
決して猫を怖がらせないように、イメージは田所さんのような優しげな高い声。
現実は……いや、あえて語るまい。
神社で地べたに這いつくばり、猫に向かってオネエになりきる不審者と化した僕は、ミリ単位ではあるが再び白猫との距離を縮めていった。
とにかく褒めて褒めて褒めまくった。
甲高い声で、かわいい!キレイ!ツヤツヤ!と褒めてやると、白猫はまんざらでもなさそうに上を向くのだが、そのタイミングが絶妙だ。
ん?
あれ?
あれれ?
さっきからこの仔……僕の褒め言葉を理解してる?
いやいや、まさかね。
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