第七章 霊媒師休日

14/20
前へ
/2550ページ
次へ
あぁ……なんてこった。 僕は白猫に憎からず思われていると過信して、調子に乗ってしまったのかもしれない。 行き場のない人差し指をおずおずと引っ込めて、猛省。 僕は自他ともに認める草食男子である。 気になる女性を食事に誘い、「その日はチョット」なんて言われようものなら2度と誘えなくなるよな最弱メンタルの持ち主だが、猫に関してはまわりが引くほどの粘りを見せる。 今日もそれは変わらない。 白猫は鼻挨拶寸前でプイっと僕を振ったけど、決して怖がっている様子はなかった。 今だってすぐ近くで空を見上げる白猫は、たまにチラチラと僕の様子を窺ってくるし、ヒゲはまだ前を向いている。 うん、諦めるのはまだ早い。 2ターン目、ファイッ! 僕はパチ……パチ……瞬きを繰り返しながら、できるだけ甲高い声で白猫に話しかけた。 「シロネコちゃぁん、かわいいねぇ、キレイだねぇ、ツヤツヤだねぇ、」 猫は男性の低い声を嫌う、好くのは女性の高い声。 男性の低い声は、猫がケンカをする時に威嚇で上げる唸り声にトーンが似ているから緊張を強いてしまうと聞いた事がある。 決して猫を怖がらせないように、イメージは田所さんのような優しげな高い声。 現実は……いや、あえて語るまい。 神社で地べたに這いつくばり、猫に向かってオネエになりきる不審者と化した僕は、ミリ単位ではあるが再び白猫との距離を縮めていった。 とにかく褒めて褒めて褒めまくった。 甲高い声で、かわいい!キレイ!ツヤツヤ!と褒めてやると、白猫はまんざらでもなさそうに上を向くのだが、そのタイミングが絶妙だ。 ん? あれ? あれれ? さっきからこの仔……僕の褒め言葉を理解してる? いやいや、まさかね。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加