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それが大きな間違いだと知ったのは、ある寒い日の事だった。
その頃の私は食べたモノを吐いてしまったり、おしっこの時にお腹がいたくなったりと散々で、お姉ちゃんはそんな私を心配して、嫌がる私を車に乗せて”大嫌い”な病院に連れて行ったのだ。
そこで__
私の毛皮同様、真っ白な服を着た男とお姉ちゃんの会話ですべてを知ってしまった。
「腎臓の数値が良くないです、これは……もう、」
腎臓というのはどうやら私の腹の中にある大事なモノらしい。
その数値がどう良くないのかは解らないが、「これは……もう、」と言いかけた男の言葉を遮るように、お姉ちゃんはこの世の終わりのような声を上げて泣きだした。
お姉ちゃん、どうしたの?泣かないで。
あぁ、そうか、わかったよ。
虫が出たんでしょう?
だいじょうぶ、また前みたいに私が捕まえてあげるから、だから泣かないで。
私は痛む身体をなんとか捩じり、重い頭を上げた。
私は目線をあちこちに投げ虫を探す。
どこだ?どこにいる?
お姉ちゃんを困らせる虫は私が許さない。
"老化"したって衰えたって、虫くらい捕まえられるんだから。
んー、おかしいなぁ。
いくら探しても見つからない、もうちょっと身体が動けば……と、思ったその時、お姉ちゃんが崩れるように、私の上に降ってきた。
私を潰さないように肘を着いて、耳元でわんわんと響く泣き声が切ない。
そして、
「嘘でしょう?先生!?小雪、死んじゃうんですか!?なんとかならないんですか!?」
この世の終わりのような悲痛な叫び声。
自分の耳を疑った。
え……?
私、死ぬの?
白衣の男の揺るがない肯定に、お姉ちゃんは力なくうなだれた。
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