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「ほぉぉぉぉわちゃぁぁっ!!」
満面の笑みで奇声を上げながらジリジリと寄ってくる社長。
机や椅子にぶつかりながら逃げる僕。
ああ、だけどまずいぞ!
もう後ろは壁だ、追い詰められた!
それ以上逃げようの無い僕は懸命に訴える。
「社長、もっと別の方法考えましょう! 僕頑張りますから! きっと放電してみせますから!」
「もちろん放電してもらうよ……! 感じる……感じるぞ……! エイミーの中の未知なる大きな力を……! その力! 俺の重い一発で解き放ってやる! スーパーミラクルダイナマイト放電能力引出しパァァァンチッッ!!」
殴られる!
僕はそう感じた瞬間、あまりの恐怖のせいか全ての動きがスローモーションで見えた。
社長の下半身が大きく捻られ__
握られた右腕が肩ごと後ろに引かれた__
ほんの半瞬、力を溜めた後__
バンッと左足が前に出て__
足から腰、腰から腕に伝わった威力が__
風を切り僕の鼻先に向かってるのが見える__
ゆっくり__
とてもゆっくり近づいてくる__
これなら避けられるんじゃないかな__
僕の鼻まであと30cm__
あと20cm__
10cm__
あれ?なんだろう? これなら、避けるよりも__
3cm____
2cm___
1cm__
0_
ペチン!
と
バチッ!
二つの音が重なった。
「痛って!!」
社長はその拳が僕の手に触れた瞬間、赤色の光が出る程の激しい静電気にやられ、痛い! バチッときた! と騒いでる。
避けるつもりでいた“スーパーミラクルダイナマイト……”なんだっけ?
そのナントカパンチは、距離を縮めるにつれ明らかにパワーダウンしていった。
やっぱり社長は僕を傷つけるつもりはなかったんだ。
それなら、と、僕は野球のキャッチャーよろしく両手のひらをミットに見立てて社長のパンチを受け止めた。
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