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いつもなら朝になれば会社に行ってしまうのに、病院に行った次の日からお姉ちゃんはずっと私と一緒にいてくれた。
お母さんとお姉ちゃんの話し声が聞こえる。
「あんた会社行かなくていいの?」
「大丈夫だよ。今まで使えなかった有給とったの。だからしばらく小雪と一緒にいられる」
「そう……休めるならその方がいいわ。小雪も……あんたがいれば安心だろうからねぇ」
「……うん」
それからの1週間。
私にとってもっとも幸せで安心できた日々だった。
相変わらず眠たいし身体は重いし、下腹はシクシクと痛むけど、朝早くから夜遅くまで帰って来ないお姉ちゃんが、ずっとずっと隣にいてくれるのだ、これ以上の幸せがあるだろうか?
私の命の最後の日。
お姉ちゃんは、それを予感したのか片時もそばを離れなかった。
「小雪、小雪、大好きよ」
飽きもせず何度もそう語りかけるお姉ちゃんの目は涙に濡れて腫れていた。
泣かないで。
ねぇ、笑ってよ。
私は今、幸せだよ。
そう、お姉ちゃんに拾われてから、今までずっといつだって幸せだった。
__雪みたいに真っ白できれいだから!
そう言って、私に”小雪”と名付けてくれたお姉ちゃん。
__小雪!遊ぼう!
20年前、私もお姉ちゃんもまだ幼くて、見るものすべてが新鮮で、一緒にたくさん遊んだよね。
今じゃもうお互い大きくなって、昔ほどはしゃいで遊ぶ事はないけれど、それでもお姉ちゃんに撫でられるのは大好きなんだ。
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