第八章 霊媒師と大福ー2

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まったく、なぁにが転送装置だ。 転送なんて聞けば、黄泉の国と東京都F市を瞬時に移動できるものと思うだろう? いや百歩譲ったとして、数分のうちにそれが叶うと思わないか? なのになんだ。 “虹の橋のふもと”の役人の操作により発動したのは、「こちらでお待ちください」と案内された鳥居そのものだった。 あの鳥居、赤く塗られて古そうな造りをしてたのに、スイッチが入った途端パァァァァっと光り、ガショーンガショーンという音と共に変形を始めた。 猫は耳が良い。 私はその不愉快な音で脳みそが揺らされるのを我慢しながら眺めていると、宙に浮かんだ鳥居は巨大な矢印へと姿を変え(どうしてそうなる!?)、その先端から操作台にいる役人の声がスピーカー越しに聞こえてきた。 「小雪さーん!この鳥居・第二形態(矢印)がF市の神社までご案内します!なぁに現世時間で30分も走れば着きますよ。30分は長い?大丈夫です!この鳥居に搭載されてる無線機は、規格a43092(よみのくに)で霊道にも強いからリンク切れの心配はありません!到着まで操作台にいる私と、遠隔でおしゃべりして楽しんで行きましょう!」 結局私はこの飛行機能のついた巨大矢印に導かれるまま東京都F市まで、光る霊道を走らされたのだ。 これを転送装置などとよく言えたものだ。 黄泉の国⇔東京都F市神社を繋ぐ、直通霊道のガイドをしてるだけで、移動手段は本ニャンである私のランニングではないか。 せめて矢印の背に乗せてくれるとか、方法はあるだろうに。 それを言ったら「座れる仕様にできてない」とか、「乗ったとしても爪で傷つけられるとチョット……」とか、ゴニョゴニョ言いおってからに。 文句を言うのも面倒だから30分走ったけれどアナログにも程があるわーっ!
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