第八章 霊媒師と大福ー2

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スンスンスンスン…… 清らかな水の匂いが強くなってきた。 やっと水が飲める。 えぇっと……あっ、あすこね。 私は前方に見える石甕(いしがめ)を見た。 間違いない、石甕の横に立つ若い男が柄杓で水をすくってる。 ああ、なんておいしそうな水。 あの男がいなくなるまで待とうかと思ったけど、どうせ私の姿は見えないんだもの。 遠慮なんか必要ない。 ぴょんっと、ひとっ飛び。 私は石甕の縁に乗るや否や、水面に顔を突っ込んで夢中で水を飲んだ。 うわぁ、おいしい! “虹の橋のふもと”の小川と同じくらいおいしい! おいしいけど手足が濡れるのはチョット不快。 私は飲みながら途中、手足を交互にブルブルさせて水気をとる、そして、飲む、そして手足を……ふはは、これじゃあキリがないわ。 んべんべんべんべんべ……ぷっはー!! うまい! ごちそうさま! トゥ! 清らかな水に大満足の私は、石甕の縁を蹴り地面に降りた。 さて、喉も潤った事だし、次は身だしなみを整えなくっちゃ。 猫たるものいつだって毛並みを艶々にしてないと。 私は迷う事無く参道の真ん中を陣取った。 テレビで見た事がある。 神社の参拝者は参道の端を歩くのが決まり事になっているって。 だからここなら落ち着いてお手入れができるわ。
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