第八章 霊媒師と大福ー2

11/13
前へ
/2550ページ
次へ
ノンノン 終わってなかった。 男の猫馬鹿っぷりは黒帯級だったようで、私が人語を理解できる事に嫌悪感を持たないばかりか、理解できるならコレ幸いとばかり、タプタプオッサン発言の謝罪やら、出逢ったばかりだけれど、どれだけ私に惚れてしまったかを延々と、本当に延々と語られた。 途中、飽きた私に怒られてようやく話を中断した男だったが、反省したのも束の間、「だめだ!もうガマンできないーーー!!」と叫ぶと、突如、ひょいっと私を抱き上げてしまった。 なっ! いきなりなにを____! って、いや待てーーーーーーー!! 私、抱っこされとるがなーーーー!! なんで?なんで?なんで? なんですり抜けないの!? もしかしてコヤツも幽体!? 否っ!! コヤツあったかーーーーい!! 生きてるーーーー!! 生きてる人の子なのに、なんで抱っこできるの? なんで触れるの? なんで?なんで?なんで? …… ………… ああ、ホカホカ……あったかいよぉ。 お姉ちゃん…… ゴロゴロゴロゴロゴロ…… 無意識のうちに喉が鳴る。 気持ちいいなぁ、心地いいなぁ、安心するなぁ。 男の懐の温かさにホワホワと眠くなってくる。 「ハックション!うー!寒っ!」 ん?どうしたの?寒いの? 男のくしゃみに「うなぁん」と声を掛けたが、なにしろあったかくて、眠くって、それどころじゃない。 薄目の私にニコニコと微笑む男は、再び人差し指を私の鼻先に向けた。 さっきは拒否してしまったけど、今度は違う。 なんでかわからないけど、この男は私に触る事ができるのだ。 鼻挨拶だってしちゃいますよ。 私はホカホカで半分寝ぼけながらも、ウニュウンと首を上にのばした。 その時、 バチバチ! ニャニャ? なんだ? 寝ぼけまなこの片目を開けると、そこには男の指先と私の鼻を繋ぐ、短い光の橋が見えた。 七色じゃあないけれど、うんと小さなものだけど、それは確かに橋だった。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加