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ノンノン
終わってなかった。
男の猫馬鹿っぷりは黒帯級だったようで、私が人語を理解できる事に嫌悪感を持たないばかりか、理解できるならコレ幸いとばかり、タプタプオッサン発言の謝罪やら、出逢ったばかりだけれど、どれだけ私に惚れてしまったかを延々と、本当に延々と語られた。
途中、飽きた私に怒られてようやく話を中断した男だったが、反省したのも束の間、「だめだ!もうガマンできないーーー!!」と叫ぶと、突如、ひょいっと私を抱き上げてしまった。
なっ!
いきなりなにを____!
って、いや待てーーーーーーー!!
私、抱っこされとるがなーーーー!!
なんで?なんで?なんで?
なんですり抜けないの!?
もしかしてコヤツも幽体!?
否っ!!
コヤツあったかーーーーい!!
生きてるーーーー!!
生きてる人の子なのに、なんで抱っこできるの?
なんで触れるの?
なんで?なんで?なんで?
……
…………
ああ、ホカホカ……あったかいよぉ。
お姉ちゃん……
ゴロゴロゴロゴロゴロ……
無意識のうちに喉が鳴る。
気持ちいいなぁ、心地いいなぁ、安心するなぁ。
男の懐の温かさにホワホワと眠くなってくる。
「ハックション!うー!寒っ!」
ん?どうしたの?寒いの?
男のくしゃみに「うなぁん」と声を掛けたが、なにしろあったかくて、眠くって、それどころじゃない。
薄目の私にニコニコと微笑む男は、再び人差し指を私の鼻先に向けた。
さっきは拒否してしまったけど、今度は違う。
なんでかわからないけど、この男は私に触る事ができるのだ。
鼻挨拶だってしちゃいますよ。
私はホカホカで半分寝ぼけながらも、ウニュウンと首を上にのばした。
その時、
バチバチ!
ニャニャ?
なんだ?
寝ぼけまなこの片目を開けると、そこには男の指先と私の鼻を繋ぐ、短い光の橋が見えた。
七色じゃあないけれど、うんと小さなものだけど、それは確かに橋だった。
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