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「シキガミ……がよくわかりませんが、この子は僕の大事な猫なんです。だけど僕の不注意で結界に触れさせてしまって意識が戻りません、」
「そういう事か。大丈夫、泣かなくていい。エイミーちゃんは言霊は習った?」
「言霊……はい、最初は社長に誤報を吹き込まれましたが、あとから正しい言霊を先代に習いました。でも使った事はありません」
「誠っ! アンタ新人さんからかうとか馬鹿じゃないの? まぁいいわ、それはあとでシメるとして。エイミーちゃん、この猫助けたい? 助けたいなら癒しの言葉を1つ選んでちょうだい。そしてこの猫を助けたいって気持ちを込めながら放電すればいい。あ、放電はできる?」
「できます! 放電だけは大丈夫です!」
「じゃあ、やってごらん? 見た感じ放っておいても大丈夫そうだけど、自分で助けたいんだろ?」
「はいっ! 今すぐにでもなんとかしてやりたいです!」
僕は地面に胡坐をかいて大福を乗せた。
言霊……癒しの言霊……となれば……
僕は湾曲させた両手に電気を溜めていく。
大福……大福……待ってて、もう少しだからね。
てっきりいつもの赤い電気が出るものだと思っていた。
だけど僕の手の中に溜まるのは光沢のある雪色で、電気が溜まるほど横たわる大福の輪郭が消えていく。
そして僕の言霊は、
「痛いの痛いの宇宙の彼方に飛んでいけーっ!」
癒しの言霊と言えばこれだろう。
ほぼほぼ田所さんのお母さんの真似をしちゃったけど、あれだけ大怪我を負っていた田所さんの回復っぷりを目の当たりにした僕は、癒し=痛いの飛んでいけ、しかないのだ。
この言霊に反応するかのように、一層の光と温かさに包まれていく。
心地良い……まるで温泉にでも浸かっている気分だ。
徐々に光が消えていく。
真っ白な大福の輪郭がゆっくりと戻ってきた。
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