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「岡村くぅん。ちょっとちょっと」
その声に振り向けば、先代が僕に向かってちょいちょいと手招きをしていた。
「なんですか?」
「うん、あのね、大福ちゃんの事なんだけど、」
「あ、はい! なんか騒がせてしまってすみません。……あれ? 僕、この子の名前が大福だって言いましたっけ?」
「ううん、聞いてない。霊視して名前がわかったの。勝手に視ちゃってごめんね。この子が社内に入れる方法を探るのに必要だったんだ。それでね、もう大丈夫だよ。会社の結界はもちろんだけど、余所で張られた結界もよほど強いものでなければ出入りできるようにしたから」
「本当ですか!?」
「うん、本当。大福ちゃんってただの幽霊猫じゃなかったんだねぇ。まだなりたてホヤホヤだけど二尾の猫又だよ。普通の幽霊猫と違って人の言葉もわかるし、知識と力をどんどん吸収する器を持っている、この子伸びるよぉ、楽しみだねぇ」
「えぇ! 大福ってそんなにスゴイ猫だったの? 尻尾の先が割れてたから猫又だとは思ってたけど……」
「本当にこの子すごいよ。霊視でそれがわかったから私の霊力を少し分けてあげたの。普通の幽霊猫なら人の霊力なんて拒絶反応起こしちゃうけど、大福ちゃんはあっという間に自分の中に取り入れちゃった。だからもう結界の通り抜けなんて朝飯前。これで会社でも一緒にいられるよ」
「うわぁ先代! ありがとうございます! 僕絶対無理だと思ってた! 大福、良かったなぁ!」
嬉しい! すごく嬉しい!
新人のクセに猫連れて出勤しちゃった事を咎められるどころか、一緒にいられるように助けてもらえるなんて!
この優しさには仕事でお返しさせていただきます!
今週も研修頑張ろうっと!
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