第九章 霊媒師 弥生ー1

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◆ 「じゃあさ、幽霊でもゴハン食べれるのって習った?」 言いながら大きなリュックの中身をゴソゴソ漁る弥生さん。 「あぁ! もう! リュックってさー、モノはいっぱい入るけど、中はもうブラックホール並みにぐっちゃぐちゃで……どこに……なにが……詰まってるか……ワカンネ」 そのブラックホールから次々と出るわ出るわ。 ブラシにポーチにスマホ充電器、ペットボトルの飲みかけコーラに(カロリー0を選んでる)キラキラハートの飾りの先にはジャラジャラと鍵の束、しわくちゃになったハンカチに、いかがわしい広告付きのポケットティッシュ、なぜか小さなウサギの縫いぐるみも入ってるし、あと飲み過ぎた時の為だろうか? 胃腸薬が数個。 もうこの段階で机の上はフリマ状態。 弥生さんは口を尖らせ、さらに下層を探る。 ソフトビニールで造られた小さな妖怪フィギュア、全5種類コンプリート……これはおそらく駅前のホビーショップ前に並んでたガチャをひねってきたのだろう。 てか、僕ら幽霊相手の仕事なのに、まだ心霊成分が足らないのか? 「あれぇ? 先代にお土産買ってきたんだけどなぁ……どこいっちゃったかなぁ……?……ん? んー?……!あったーーーっ!」 ブラックホールに呑み込まれ、その中を彷徨い潰されていた先代へのお土産。 それが今、弥生さんの手によって奇跡の生還を果たした。 「芋饅頭ぅ!」 世界的にも有名な猫型ロボットのキメ台詞のようなイントネーションで、天高く突き上げられた紙袋……は、見るも無残、クシャクシャに潰れていた。 が、しかし、先代の喜びようは尋常じゃなく、 「なに!? 芋饅頭!? 弥生しゃん! 芋饅頭買ってきてくれたの!?」 “弥生ちゃん” が ”弥生しゃん” になってしまう程だった。 そんな先代に目を細めた弥生さん、 「そーよー、だって先代、コレ好きでしょう?だからみんなで食べようかと思って。もちろんエイミーちゃんと誠の分もあるわよ、お茶でも飲みながら幽霊の飲食について研修しよっか」
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