第四章  霊媒師研修-2

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『やっぱり私と岡村君は運命の赤い糸で結ばれていたんだねぇ!』 そう言って自身の小指に絡まる赤い電流を、得意気に僕に向けるのは子供のような笑顔ではしゃく先代だ。 赤く光る電流、先代曰く“運命の赤い糸”は真っ直ぐ僕の人差し指へと続き、時折パチパチと小さくスパークしながらもしっかりと両間を繋いでいる。 す、すごいぞ! 本当に繋がった! 僕の投げた電気がちゃんと先代に届いてる! 幽霊である先代と直結されてる! やったっ! これで“幽霊”と“生きた人間”を視分ける事ができるっ! ”株式会社おくりび” 入社5日目。 研修初日から毎日放電の訓練を受けていた僕は、とうとう自分の意志である程度の放電ができるようになった。 訓練開始から最初の3日間は、何度やっても静電気程度の放電しかできなかったのだが、見かねた社長が“放電能力を高める言霊”として、 『この浮気者―!お仕置きだっちゃーっ!』 これを裏声で唱えてから放電すれば力が増幅されるのだと教えてくれた。 だけどどうも怪しい……社長、言いながら途中笑ってたし。 大体“浮気者”ってなんの話?  “だっちゃ”ってどこかの方言? そもそもなぜ裏声で? これ……絶対言霊じゃない気がする。 躊躇する僕に対して「俺を信じろ!」というここ1番の社長の真面目顔にほだされて、思い切って唱えてみのはいいけれど出るのはやっぱり静電気だけ。 社長はといえばヒーヒーと大笑いしながら、しっかりスマホを僕に向けていて……あれ、絶対僕の言霊動画とってたんだと思う、、お願いですから消去してください。 僕はとにかく、もうその言霊を唱えるのが嫌で嫌で仕方なくて、でもそれがかえって原動力になったのか、言霊無しでも放電出来るように、そりゃあ必死に頑張ってきたのだ。 その甲斐あってか、4日目から5日目の今日にかけ桁違いに放電量が増え、幽霊である先代に協力してもらい放電させてもらったところ、無事、電気の架け橋が渡されたのだ。 正直ほっとした。 霊媒師として入社したのに、“幽霊”と“生きた人間”の区別がつかないままでは仕事にならない。 それに……教え方に多少の難はあるものの、僕の為にこんなにも親身になって教えてくれる社長に応えたいと思うんだ。 前の会社でも研修はあったけど、ここまで熱くなかったから。
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