第九章 霊媒師 弥生ー2

2/72
前へ
/2550ページ
次へ
草木も就寝準備にとりかかる午前0時。 ここは東京都とS県を跨ぐ峠道。 山と言える程のものじゃないが、頂上にある県境を越えてS県に入り、連続カーブの下り坂を社長のソウルカーであるランサーエボリューションⅤで走行中だ。 目的地であるS県T市。 ここに建つ噂の廃病院は、今最も熱い心霊スポットと言われている。 数年前から噂にはなっていたが、ネットのオカルト板で堂々の殿堂入りを果たしてからは、肝試しの若者達が一気に増え、騒音やゴミの問題、そして治安悪化の懸念から近隣住人からの苦情が相いでいるという。 その苦情件数に頭を抱えたS県のT市役所様からのご依頼が……今回のお祓いとなるのだ。 ちなみに……オカルト板で殿堂入りを果たしたキッカケとなる書き込みは、廃病院で肝試しをした若者達の、 【ガチの悪霊と遭遇したんだが質問ある?】 というものだった。 で、具体的にどんな書き込みだったかというと、 廃病院の幽霊というのは複数いて、その全員が元病院の看護師や医師らしく、怨み辛みを白衣に滲ませ、呪いの言葉を撒き散らしながら、肝試しの若者達を追いかけまわす。 たとえば血まみれの看護師、壁や床から身体の一部だけだしている看護師、割れた注射器で襲ってくる看護師、悲鳴のような呻き声を垂れ流す看護師等々。 そんな幽霊達の中で、もっとも遭遇してはいけないのが廃病院、医院長の幽霊だ。 もし出会ってしまったら最後。 逃げられないようメスでアキレス腱を切られ、痛みと恐怖で泣き叫び、「助けてくれ!」と命乞いする若者を嘲笑いながら腹を切り裂き臓器を啜り喰らう…………きゃぁぁぁぁぁぁぁ!
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2365人が本棚に入れています
本棚に追加