第九章 霊媒師 弥生ー2

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怖すぎる。 ここまで凶悪な悪霊達相手に突撃訪問&強制お祓いなんて絶対無理。 どんな怨み辛みでこの世に留まっているのか知らないけど……それでも彼らの話を聞き出す事ができればまだ望みはある。(と、思いたい) けど、いつ弥生さんの爆弾投下が(”全身タイツ野郎”発言とかね)あるかわからない状況では、それも難しい。 僕の華麗なジャンピング土下座だけで夜が明けてしまうかもしれないし。 そりゃあね、格闘系霊媒師と呼ばれる社長や、強引に霊を縛り上げる事のできる霊力自慢(ちからじまん)の弥生さんなら、そんなに怖くもないだろうけど、放電と言霊しか習得してない霊媒師としてレベル2の僕じゃあ、逆立ちしたって勝ち目はない。 ふぅ、と小さく溜息をついて僕はルームミラーで後部座席を見た。 後ろのシートには弥生さんと先代、そして先代の膝の上でアンモナイトのように丸まった大福がぷーぷーと鼻を鳴らしながら熟睡していた。 ぷーぷーって……あのちっちゃい鼻にハナクソでもついてるのかな? 鼻息でハナクソがブルブル震えて、鼻笛みたくなってるのかも。 って、ぐはっ! 大福かわいいすぎるだろ! ハナクソすらかわいいって、もうプロだな。 職業は"カワイイ"だな。 …… ………… あぁ、そうか、そうだよ。 今夜、お祓いの現場に大福を連れてきてしまったんだ。 危ないから置いていこうとしたのに、着いて行くといってきかなかった大福は、僕の大事な大事な、世界で一番愛おしい幽霊猫だ。 連れてきたはいいけど、大丈夫だろうか? また、大福になにかあったら、僕は生きた心地がしない。 あぁ! しっかりしろ! 岡村英海! 医療系悪霊軍団がどんなに恐ろしかろうと、大福を守れるのは僕しかいないんだ! こんな弱気でどうする! 大福にかすり傷1つだってつけさせない! そうだ、そのためには今この道中だって無駄にはできない。 対悪霊戦という事で社長にコツを聞いておこう!
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