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ガッ!
グオォォォォォォォォンッ!!
「な! これがエンジンブレーキだ。シフトダウンだけで減速したろ? 峠道だしフットブレーキばっかりだと摩耗熱でそのうち利きが悪くなる。なによりこうやってエンブレきかすと、車が良い声で鳴くんだよ」
エンブレ……? 摩耗熱……?
えっと……これって、もしかして、お祓いと関係なくない?
「あれ? エイミーなに黙ってんの? わかりにくかったか? もう一回やるか? 何度でもいいぜ?」
と、嬉々として次のカーブにそなえる社長。
僕は慌ててこう言った。
「や! ちょっとすみません! 一度整理させてもらっていいですかね?」
「おう! なんだ?」
「あの、これって廃病院でのお祓いと、なんか関連性があるんですか?」
「お祓いと? いや? なに言ってんの? あるわけねぇだろ。え? つか、おまえ、俺に質問って車の事じゃないの?」
「や……ちがいます」
「じゃあ、なに、もしかして仕事の話だったのか?」
「はい、まぁ、そうです」
「えぇ!? マジか! てっきり車の事かと思ってた!」
本気でビックリ! みたいな顔の社長は、それでもまだ一方的に車の話を続けている。
あぁ、そういえば。
前に先代が言ってたな。
____大体清水君は車の話になると長いんだよ、
____先月だっけ?
____せっかく女の子とドライブに行ったのに、
____ずーーーーーーっと車自慢しちゃって、
____それ以降連絡取れなくなっちゃったのは、
って。
これかー!
こりゃ確かに女の子は戸惑うわー!
てか、僕も充分戸惑ってますしー!
一度火がつくと止まらない、社長の車トークはそれから延々、現場に着くまで終わらなかった。
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