第九章 霊媒師 弥生ー2

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若者達と言えば__ この不気味な廃病院の門扉の前に、随分と場違いなセダン車が斜めに停められていた。 「今日は平日で水曜日だってのに、肝試しヤローが来てるみたいね。明日仕事じゃないの? それとも学生か?」 後部座席で寝ていたはずの弥生さんが、身を乗り出してセダン車を見詰める。 ああ、やっぱりか。 この廃墟の中にポツンと浮いた、ピカピカのあの車は肝試しに来た人達のものなんだう。 「まったくな。子供は風呂入って歯磨きして寝る時間だろ。俺らの仕事の邪魔しやがって。しかもなんだあの車。カスタムゼロのドノーマル車じゃねぇか。たぶん親の車借りてここまで来たんだろうな」 と、ため息をつく社長。 「ま、そんな事どうだっていいじゃない。一般人がウジャウジャいたらやりにくいけど、今夜のお客様は1組だけ。とりあえず誠、その肝試し野郎共追い出してよ。ガタイのいいツルッパゲのオッサンが吠えながら近づいて行けば、それだけで逃げてくれるだろうからさ」 と、ケラケラ笑う弥生さん。 「や、でも、あんまりやりすぎると通報されて、かえって仕事がしにくくなるかもしれません。社長、ここはひとつ満面の笑みで追いかけてみてはどうでしょう? ツルッパゲの大男が笑顔で追いかけてくる、これはこれで不気味だから逃げてくれると思うんですよ。だけど暴力的でない分、通報される確率は下がるかと」 と、リスク回避の為の代案を出す僕。 「ふぁあ~、よく寝たぁ~、なに? もう現場着いたの?」 と、ムニャムニャ目を擦り、寝起きで更に癒し度の上がる先代。 「うなぁん……ゴロゴロゴロゴロ……」 と、同じく寝起きで宇宙で一番の愛らしさを振りまく大福。 キャー! カワイイ!!
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