第九章 霊媒師 弥生ー2

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「1階には肝試し野郎共も幽霊もいないみたいねぇ」 つま先で空き缶を蹴りながら弥生さんが言う。 「そうみたいだな。さっき外の車のボンネットさわったら冷たかったからさ。たぶん俺らよりだいぶ早く着いて、1階はもう見終わっちまったんだろう。俺らも2階に上がってみるか!」 と、弾んだ声の社長。 たぶん声の感じからして笑っていそうなんだけど、おでこに装備されたLEDヘッドライトのせいで目から下が影になって表情を見る事はできない。 社長は僕と弥生さんに自前のペンライトを貸してくれたのだけど、 「俺さ格闘系霊媒師じゃん? だからイザという時、すぐに戦えるように手に何か持っていたくないんだ。だからコレ! ヘッドライト! 頭につけるから光は確保できるわ、両手は空くわ、しかも探検隊みたいで見た目もカッコいいだろ! へへっ!」 なんだそうだ。 真ん中で輝く大きめのメインライトの両サイドには、一回り小さいサブライトが2つずつ、合計5つのLEDがビッカビカに輝いている。 「おい、エイミー!」なんてこっちを向かれると、まぶしっ! って目を瞑ってしまうくらいの激しい照度だ。 しかもこのヘッドライトにはインカムも付いていて、社長のスマホと接続設定をしてるから、通話もハンズフリーでいけるらしい。 てか、社長、こーゆーの好きだよなぁ。 「よーし! おまえら俺に着いて来い! 行くぞー!」 テンションの高い社長を先頭に、弥生さん、僕の順番で階段を上がる。 弥生さんは僕よりベテランの霊媒師だけど、女性だから身体的な力は僕より弱い。 霊を相手にするなら弥生さんの方が強いけど、”肝試し野郎” の皆さんは生者な若者で、お酒でも飲んでいようものなら、女性である弥生さんに絡む可能性が高い。 だから僕が最後尾についたのだ。 霊媒師としてレベル2な僕だけど、謝罪レベルは99なので絡まれてもどうにでもなる。(多分ね)
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