第九章 霊媒師 弥生ー2

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◆ 誰もいない廊下を挟み両側に並ぶ無数の横開きの扉。 ガラ、ガラ、ガラ、ガラガラガラガガガガガガガガガ___ それが手前から奥に向かって順にひとりでに開いていく。 開放された扉から青い光が輪郭も曖昧に流れ込み、暗がりの廊下が薄明かりに満ちた。 「へぇ。こりゃ、俺らへの気遣いか?」 機能しないヘッドライトをつけたままの社長がへへっと笑った。 「助かりますね。瓦礫やゴミでいっぱいですから、暗いままじゃ危なかった」 言いながら僕は割れたコンクリの小山を跨ぐ。 跨いだ先にもまた別の瓦礫やゴミがあって、気を付けなければ転んでしまう。 空き缶、ペットボトル、崩れた壁にガラス片、そして人の顔__ん? 「って、うわ!!」 僕は降ろしかけた足の先にある、床から生えたような生首に慌てて足を引っ込めた。 片足を上げたまま停止し固まる僕とガッツリ目が合う床の霊は、ニコッと笑いこう言った。 『うらめし……うらめし……くはないんですよねぇ』 まただ!この(ひと)も “うらめしくない” の? 年の頃は40代くらいか、先程の目玉グルングルンの看護師さんよりは若く見える。 とりあえず僕はしゃがみこみ、首のまわりに散乱するゴミと瓦礫を片づけた。 「あの、大丈夫ですか? 身体は外に出せますか?」 すると40代女性の霊は、それには答えず床からズズズと片手を出して指をさし、 『1mくらい先、進行方向左側。床が少し割れてるから気を付けて、』 それだけ言って消えてしまった。
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