第九章 霊媒師 弥生ー2

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僕と社長は顔を上げて1m先を見る、と、そこには、さっきまでいなかった若い男性看護師さんが床に向かって指をさしていた。 「なんだ兄ちゃん、そこか? そこの床が割れてんのか?」 社長がデカい声で問いかける。 男性看護師さんは頷きながら、 『そうです。だから気を付けてください』 と、笑った。 あ! これ、また言いたいこと言って消えちゃうパターンじゃない? 僕は慌てて声を掛けた。 「ありがとうございます。気を付けます。それであの! もしかして、あなたも、うらめしく……」 『ないですよ』 と、照れたように笑い消えた。 やっぱり。 なんだか様子がおかしい。 長い廊下を僕と社長は首を傾げながら進む。 「社長。ここって悪霊の巣窟って噂でしたよねぇ?  あ、看護師さん、どうもすみません。右側の壁が崩れやすいんですね? 了解です、気を付けます。それで、あなたも……ああ、やっぱりうらめしくないんですね」 僕達は途中、危険な個所を教えてくれる何体もの霊達に誘導されながら、長い廊下を歩いている。 どうも霊達は建物内を熟知しているようだ。 そして最初の目玉グルングルンの看護師さん以降、もはや脅かすつもりもないらしく、みなさん気さくに注意喚起をしてくれるし、口をそろえて ”うらめしくない” と言っている。 もう、訳がわからないよ。
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