第九章 霊媒師 弥生ー2

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すでに十数名の看護師さんの幽霊とすれ違い、とうとう僕らは長い廊下の突き当たり、他の部屋より少しだけ重量感のあるドアの前に着いた。 僕の目線と同じ高さにあるプレートには、”院長室” と擦れた文字が記されていた。 「社長! ここ院長室って書いてありますよ! まずくないですか? ここの院長って生者の臓器取るんですよね!? その為にアキレス腱切って動けなくしてから、おなか切り裂くんですよね!? 僕おなか裂かれたくないですよぉ。あっ! 社長! 今すぐソウルアーマー装着してください! それで拳で院長やっつけてくださ、」 「えぇい! 落ち着け、エイミー!」 「あ……なんかすみません」 「大丈夫だ、イザとなったら俺がミンチにしてやる。で、新たなソウルアーマーのストックにしてやるさ。けどよ、やっぱりオカシイだろ? T市役所から聞いた話とネットの噂じゃ、ここの幽霊共はみんな凶暴で、肝試しの連中追いかけ回すって、でもってボスキャラの院長は臓器を狙う悪霊だって話だったのによ」 「確かにそうですよねぇ。最初に会った看護師さんは僕らを脅かしにきたけど、その後の霊達は脅かすどころか、みんな親切でしたよねぇ……」 「そ。みんな揃って ”うらめしくない” とか、悪霊にあるまじきだし、襲ってもこねぇ。この流れでいくと、凶悪と名高い院長も大したことねぇんじゃね?」 「事情があるんでしょうか?」 「ま、どんな事情があるにしても、生者を怖がらせ害を成してたのは間違いねぇからな。とりあえず、会って話を聞いてみようぜ?」 「そうですね。よし、じゃあ、行きますか」 コンコン 僕は院長室のドアをノックした。 そしてゆっくりと扉を開ける。 「失礼します、」 開けた扉の向こう側。 そこには小さな背中の白髪の白衣の(ひと)がいた。
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