第九章 霊媒師 弥生ー2

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「んーじゃあ、質問変えるわ。ここにいる看護師達はみんな院長の部下なのか?」 『そうです。今は全部で14人。みんな生前この病院で働いていた私の大切な仲間達です』 「ふうん、そっか。みんな同時期に死んだのか?」 『いいえ、死んだのは年齢からいっても私が最初です。享年67才、病死でした。彼ら彼女らは私が死んだ後、時期もバラバラに亡くなりました。……みんな成仏しようと思えばできたのに、そうはしないでここに集まってきてくれたのです』 「なんの為に? 院長も看護師の人達もさ、普通、よっぽど心残りでもなけりゃ成仏するだろ? 死んだ時、光る道がお迎えにこなかったか?」 『光る道……? ああ、来ましたねぇ。あれはキレイだった。だけど私はこの病院に残る為、光る道へは進みませんでした。ほかのみんなは私の為に、誰に恨みがある訳でもないのに来てくれました……私の為なんかにって申し訳ない気持ちはあるのだけど、同時にありがたいとも思っています』 院長の為に看護師さん達が集まってきた? 看護師さん達それぞれ特別な怨み辛みがあった訳じゃなく、院長の為にあえて成仏しないでこの病院に戻ってきたというのか? 逆に言うなら、院長がこの病院に留まっていなければ、今頃看護師さん達は成仏し、黄泉の国で暮らすか、生まれ変わるかしていたということになる。 この院長がなんの為にこの病院にいるのか、それを知ることが問題解決のカギになる。 「じゃあさ、次の質問。看護師達が怨み辛みでこの世に残ってるんじゃねぇのはわかった。院長の為だけに留まってるってことも。それなら院長は? この病院になんか恨みとか心残りとか、そういったものがあるのか? ま、なきゃ、こんなことにはいねぇだろうけど、具体的に教えてくれよ」 『恨み? とんでもない! 私は自分の人生に満足してやりきって寿命を終えました。成仏できないほど誰かを恨んだり憎んだりなどありません。私は家族に恵まれ、部下に恵まれ、まわりに助けられて生きてきました。助けられているのは今もです。ありがたいかぎりです。ただ、』 「「ただ?」」 思わず僕と社長でハモってしまった。 『ただひとつ、心残りが__』 院長の心残り、それが何年にもわたるこの廃病院の幽霊騒ぎに繋がっている。 なにが彼をこの世に縛っているのだろう……?
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