第九章 霊媒師 弥生ー2

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「えっと……社長。もしかしてあの(ひと)、さっき廊下で会った親切な看護師さんでは……」 おずおずと社長に声を掛ける僕。 「んー、だな」 と、短く返す社長。 僕らは多く語らずとも、このちっとも、“脅す” ではないこの状況を、しばらく静観してみようと気持ちは一致していた。 窓枠の生首を皮切りに、出てくるわ出てくるわ『うらめし……や(仮)』軍団。 最初は1人だけだったと思われるヒュゥドロ音は、いつの間にか人数が増えたようで、音に高低をつけてハモったり、輪唱になったりと明らかに完成度が上がってる。 その美しく仕上がったヒュゥドロ音をBGMに、天井からは逆さになって落ちてくる看護師さんや、顔半分が白骨化した看護師さん(この方はビジュアル重視なのか白骨メインで大きな動きはほとんど無し)が登場。 そして少し遅れて現れたのは、右手に注射器、左手には脱脂綿を持った女性の看護師さん。 30代半ば……おそらく僕と年の近そうなその方は、おどろおどろしい口調で、 『うらめし……や(仮)……ところで……アナタ……今までに……アルコールで……かぶれた……コトは……あります……か……?』 と、聞いてくる(とりあえず無いと答えた)。 一応恨めしそうな言い方はしてるけど、コレただの質問だよなぁ。 献血の時によく聞かれるヤツだ。 でもってまた新しい(ひと)が登場って……えっ!?えぇ!? なんかスゴイのが出てきたっ……! その(ひと)は多汗ぽっちゃり系の男性看護師さんで、通常の3倍の長さがありそうな点滴スタンドを持参して、長いパイプに絡みつき、ポールダンスを踊リ始めた! 彼はもう、『うらめし……や』すら言ってない。 彼はそのぽっちゃりボディに似合わない激しく機敏な動きで、甘くセクシーに身をくねらせては『ポゥ!  ポゥ!ワァオ!』と叫んでる。 ついでに言うなら、彼、ひとっ風呂あびたような大量の汗で、医療白衣が透けに透けまくってるんだ……。 見たくない……けど、なんか見ちゃう…… てか、もうなにコレ! 超カオスなんですけど!
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