第九章 霊媒師 弥生ー2

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あろう事かウチのトップは、(かれ)の熱視線を真っ向から受け止め、ジャケットを脱ぎ捨てると筋骨隆々の巨体をリズミカルに揺らし、散乱する瓦礫を足で一掃させると、激しいステップを踏み始めた! 「しゃ、社長!なにやってんですか!?」 狼狽える僕に、社長は背を向けたままこう言った。 「あぁ? 決まってんだろ? ダンスバトルだ! アイツがさっきからカマンッ! カマンッ! ってバトルを挑んできてる! あんだけ挑発されて同じダンサーとして逃げる訳にはいかねぇ!」 同じダンサァ!? 誰がですかぁぁ!? 社長は霊媒師でしょぉぉぉ!? いつからダンサーになったんですかぁぁぁ!? 「ハッ! エイミーの言いてぇ事はわかってる! 俺がストリートを引退して何年たったんだ? あの頃みてぇに踊れるのか? って、言いてぇんだろ?」 まてまてまてまて! 社長がストリートダンサーだったなんて初耳なんですけどぉぉ? そんなこと一切聞いたことないんですけどぉぉ? 「けど引けねぇよっ! アイツの目ぇ視ただろ?」 視た! 視た! 視ましたけど、言ってる意味がわからないぃ!! 「あれは絶対的な自信を持った目だ! テメェのダンスにプライドを持ってる……! ポールダンスとブレイキン、立つ舞台は違っても挑まれたら受けるしかねぇだろ!」 えっと落ち着け僕! よくわかんないけど社長の専攻はブレイキン? だったってことでOK? ブレイキンってブレイクダンス? ああ、もう!ダンスの種類はどうだっていいや!どうせ説明されてもわからないし! そんな事より、社長は本気だ……! ダンスバトルを受ける気だ……! てか、今って“襲う”と“脅かす”の違いを体感的に説明されてたはずなのに、なんだってこんな事にーっ!
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