第九章 霊媒師 弥生ー2

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◆ 感動した。 社長のブレイキンと(かれ)のポールダンスは、間違いなくエンターテイメントだった。 バトルが始まって最初は戸惑ったものの、ギャラリー(僕と、院長とその仲間達)は、ダンサー2人の熱いパッションに呑まれ魅せられ夢中になった。 勝敗は僅差で社長だった。 瓦礫やガラスの欠片が散らばる廃屋で、ブレイキンの大技であるウィンドミル(床でクルクル回るヤツね)をやりきったダンス魂が評価されたのだ。 おかげで社長は擦り傷だらけ。 それでもブランクのあるダンスで、バトルに勝ったのが嬉しかったのか良い顔で笑っていた。 「タカシ! おまえのおかげで、もう一度踊ることができた、礼を言うぜ!」 ポールダンスの(かれ)はタカシさんって名前らしい。 すっかり社長と仲良くなっている。 とりあえずストリートダンサーだった頃の話は、この現場が終わったら改めて聞いてみようと思う。 『生死の垣根を越えた2人の試合、とても素晴らしかったですよ!』 おおきな拍手をしながら声を上げたのは満面の笑みの院長だ。 興奮冷めやらぬ院長はさらに続けてこう言った。 『それで、清水さんエイミーさん。これでご理解いただけましたか?“襲う”と“脅かす”の違いが!』 えっ? えぇ!? と、スミマセン、 今のダンスバトルでわかる人はいないと思います! 『仕方ないですねぇ。それでは順を追ってご説明いたしましょう。いいですか?まず私達はシフト勤務を導入しています』 「「シフト勤務?」」 今夜は社長とよくハモる。 だけど、そりゃ聞き返したくもなるだろう? だって幽霊軍団がシフト勤務って、なんのこっちゃってなるじゃない。 『そう、シフト組んで交代制にしてるんです。ここに集まってきた看護師達はなにも毎日、一日中ここにいる訳じゃありません。日勤と夜勤に分けています。日勤者は肝試しの若者が来ない昼間のうちに建物内を点検します。危険な場所はないか? 新たに崩れた場所はないか? 徹底的に現場を調査します。私達は現調班と呼んでいますがね』 「現調班……」 『その現調班は点検終了後、私に結果報告をしてその日の勤務は完了、あとは夜勤に引きとなります』
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