第一章 霊媒師募集

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「そうです。この商売グレーになりがちなんです。そこでこの会社が設立されました。この会社は才能ある霊媒師を社員として雇い、雇用後も常に技術向上の為の定期研修を行っております。ですから霊媒師によってスキルの差がある……といった事がありません。そして料金も、一般的には霊媒師の言い値でしたが、この会社は明確です。たとえば基本出張料金が5千円。除霊一体につきプラス1万円。ポルターガイスト現象一部屋につきプラス8千円、といった感じです。霊障に悩むお客様に問診をしながら、予算に合った除霊をご提案します。いかかでしょう、良心的な会社ですし業績も徐々に上がっています。ここはひとつ面接を受けてみたら」 老職員の熱心な説明も、僕の耳には入ってこない。 だって霊媒師なんて絶対無理だもの。 「はぁ……もしも僕がこの先、幽霊で困ったら相談してみたいなと思いますが面接は受けません。さっきも言いましたが、僕、本当に霊感なんてないんです。この会社に行っても何もできません。せっかく紹介してもらって申し訳ないのですが……」 求職中の身でありながら断るなんて、仕事を選り好みするようで気が引ける。 どんな仕事だって頑張りたいとは思ってるけど……さすがに霊媒師はスキル的に無理だ。 それなのに。 別の業種を紹介してもらいたい僕に、老職員はとんでもないことを言い出した。 「そうですか。まあ、最初は自分に自信が持てなくて当たり前です。大丈夫ですよ。とりあえず会社面接に行ってみましょう。明日あたりご都合いかがですか?」 「えっ!? ちょっと! 人の話を聞いてましたか!? 僕には霊感が無いから無理だと言ったでしょう!?」 「いいえ、大丈夫です。あなたならきっとできます」 あなたならできる、この無責任な言葉に僕のイライラはピークに達した。 話がまるで通じない、これ以上ここにいても時間の無駄だ。 「霊媒師なんてできませんと何度も言ってるじゃありませんか! これ以上話すことはありません、今日は帰ります」 「あぁ! そうおっしゃらないで! 私の話を最後まで聞いてください! 待って……!」 そう言って老職員は、あろうことか帰ろうとする僕のシャツを掴もうとしてきた。
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