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『この廃病院はね、肝試しや馬鹿騒ぎをしたい若者だけが来る訳じゃあないのです。残念ながら、仕事に、学校に、友人に、恋人に、家族に____人生に疲れ、命を絶ちに来る若者もいるのです』
自殺志願者……ってことか。
だけど、だけどさ、死ぬほど思いつめた人がポールダンス見て立ち直るのか?
いくらなんでもそれって無理があるんじゃないか?
『死ぬつもりでやってきた若者はね感情が乏しい。頭の中は命を終わらせることで一杯だもの、無理はないのだけど。最初はね自殺志願者を前に私達はものすごく慌ててね。説得には応じてくれないし、幽霊の私達を見て怖がるどころか自分もそちら側に逝きたいと、かえって死の垣根を低くしてしまってね。それで……仕方がないので強硬手段に出たのです。死ぬ気が失せる程怖がらせるというね』
「どうやって脅したんだ? あんたらが本気出したところで、あのノリじゃ死ぬ気が失せる程怖がらすことができるとは思えねぇが、」
そう言って社長は眉を段違いに寄せ疑いの目を投げる。
すると、
『言い忘れていましたが……ウチには特殊メイク班もいましてね、ハイ! 特メイ班! 出番ですよ!』
院長が言ったが早いか、使い込まれた道具箱を抱えた男性看護師さんの2人組が院長に飛びかかりなにやらもみくちゃにし始めた。
時間にして数十秒後。
特メイ班2人がスッと後ろにさがり、真ん中に残されたのは____
え……?
え?え?えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
ちょっとなんなのぉぉぉぉぉ!!!
信じられないんですけどぉぉぉぉぉ!!!
あまりの変わりように僕も社長も言葉が出ない。
威風堂々、そこに立っていたのはプリティマルチーズ改め、ストロングドーベルマンだった。
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