第九章 霊媒師 弥生ー2

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そう言って目を細める院長の横に、音もなく特メイ班の2人がさり気なく近づくと、バサァッとベッドシーツのような布をかぶせ、ワン、ツー、スリー! と手品師のようなカウントをとった。 そしてバサァッと今度はその布を取り払い僕らに向かって一礼するとスッと後ろにさがる、と。 おぉ!! 布から出てきた院長が元のプリティマルチーズに戻った! カワイイ! やっぱりこっちの方が好き! 社長もそんな霊的マジックに目を丸くしつつ、 「特メイ班スゲェな! オイ!って、話は戻るが、救いか。今まであのポールダンスでたくさんの生者達が助けられてきたんだな。タカシ……オマエもスゲェぜ!やっぱり最高のダンサーだ!」 興奮冷めやらぬ力強い叫びとともに、ブンッと短い起動音。 同時に社長の両腕が白く発光する、ソウルアーマーだ。 これで腕だけは霊体を物体として捉える事ができるようになった社長は一体なにをするつもりなのか? 普段は霊との戦闘時に装着するものだけど……まさか感動のあまりタカシさんを殴るつもりじゃ!? 拳でわかり合うな考えの人だし可能性はゼロじゃない! ちょ!社長!?そういうパッションは良くないと思います!と、言いかけた僕をガン無視で、タァっと巨体を跳躍させて、タカシさんの前に降り立った! 筋骨隆々のダンサーと柔肉ぽんよぽんよのダンサー2人が向かい合い、熱い視線を交わし合う。 そして、 「『ウェーイ!!』」 両者、手の平をパチーンと鳴らしてハイタッチ。 それを合図に互いの拳をコツンと合わせ、腕をクロスに絡ましたり、バイオレンスじゃない方向での打ち合いが始まった。 おお!この感じ、テレビや映画で見たことあるぞ! 「ハッハー! ヘイ! ブラザー!」とか言いながら、ゴチンゴチン拳をぶつけるご挨拶だ! 小さな女の子達がする手遊びの“アルプス一万尺”の上位互換な、そんな感じにも似ているやつ! 社長め、この為にソウルアーマー装着したのか。 タカシさんも社長もめっちゃ息が合ってて笑ってる。 『おぉ、なんだか楽しそうですねぇ!これはあれでしょう?“アルプス一万尺”でしょう?』
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