第九章 霊媒師 弥生ー2

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『看護師長がね、慌てて報告にきてくれました。霊媒師さんがもう来た!って。私はね、ああ、今夜お祓いされて消されてしまうんだろうなぁって思いました。私はこの病院の院長だ。これまでのこと、すべての責任は私にある。だから消すのは私だけにして、他の職員達は見逃してもらえないか、できればは極楽浄土に送ってはもらえないかと交渉するつもりでした。でも、』 そう言ってフフフと院長は笑い、幽霊軍団のみなさん一人一人の顔を順に見る。 涙の笑顔に院長は柔らかに微笑むと、社長を真っ直ぐに見つめこう続けた。 『でもねぇ、清水さん。あなたは事情を知らないはずなのに、それでも最初に「成仏する気はあるか?」と聞いてくれた。一方的に力を行使するんじゃなくね。私の話を聞いてくれ、タカシくんと踊りの試合もしてくれて、私達の最後の宴会にも参加してくれた。本当に嬉しかった。そして私達をこの世に縛る、廃病院(ここ)の取り壊しも決まった。もう……なにも思い残すことはありません』 思い残すことはない、そう言いきった院長の表情は、穏やかで晴れやかだった。
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