第九章 霊媒師 弥生ー2

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「ケッ! バカ誠が! 弥生サマに逆らうからこうなるんだよ! 反省しろ!」 そう言って後ろに反りかえる弥生さんに、珍しく社長が泣きを入れた。 「おまえなー、俺、いま両腕にソウルアーマー装着中なんだぞ? てことは身体の数パーセントは霊体みたいなもんなんだぞ? そんな俺に霊力込めて思いっ切りパンチ打ち込むなよ……マジ死ぬかと思った」 「こんだけ体格差があんだからドローだろ? てか、アタシの勝ちか! あひゃひゃひゃひゃ!」 片目を見開き、片目を細め、悪魔のように笑う弥生さんに僕は質問を投げかけた。 「あの、弥生さん! さっき社長が言ってたことなんですが、ソウルアーマー装着中で身体の数パーセントでも霊体化していると、生者にも霊力が有効になるんですか?」 「そう、ガンガンに有効よ。普通はさ私の腕力じゃ誠どころかエイミーちゃんにも負けると思う。生者相手じゃ物理攻撃で勝ち目はないもの。でも死者なら……霊体なら話は別。霊力でふん縛ることも、ぶん殴ることも朝酒前だわ」 ん? 朝飯前のこと、かな?かな? 「アタシの悪口言って馬鹿笑いしてる誠のヤロー、視れば両腕光ってるじゃない。てことはソウルアーマーで霊体化してるだろうから、今なら勝てるって思ってさ。全身に着けてたら霊力モロに受けちゃうからヤバイだろうけど、両腕程度なら霊力パンチもありかなって」 両腕程度でもあの威力か……こえーっ! 「なるほど……そういえば社長、胸というか心臓押さえてましたよね? ソウルアーマー着けてる腕じゃなくて胸を殴ったのはどうしてですか?」 「霊体化してる腕を霊力込めて攻撃すると粉砕骨折は免れないだろうからね。例えば生身の人間氷漬けにしたとして、その氷の上から強い衝撃を与えると中の人間も損傷するでしょう? だからアーマー着けてない心臓狙ったのよ。ま、これもアタシの優しさ?」 「粉砕ってマジか……弥生さんが社長の胸叩いた時、社長、動き止まってましたよね?息もできないって感じでしたけど、それも霊力の力ですか? 体格差もあるし、女性の力で社長の動きを止めるって……もしかして、全然知らないけど気功法?」
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