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『ちょっと! これ! お酒! お酒じゃないの!』
『院長! 院長の好きな日本酒ですよ!』
『本当だねぇ! これ鬼殺しだよ! 私が一番好きなやつ! んまいねぇ!』
『僕、お酒飲めないはずなのに、なんでだろう?すごくおいしい!』
『なになに!? まだ宴会続くの!? 望むところよっ!』
『お酒なんて飲むの何十年振りかしらぁ!』
院長と愉快な幽霊軍団のみなさんは、予想外にふるまわれたお酒に大喜びではしゃいでいた。
そりゃそうか。
肝試しの若者達はここでお酒を飲む事はあっても、幽霊のみなさんに飲んでほしいと願う人はまずいない。
だからお酒を目にすることはあっても、こうして味わうのは生きていた頃以来なんじゃないだろうか?
「レイディース&野郎共!!」
しゃがれた大声が明け方の廃病院に響き渡り、お酒に大盛り上がりだった院長と幽霊軍団のみなさんはピタッと話を止めると、宴会リーダーこと弥生さんに注目した。
「えー、みなさん!まずはアタシのような 若 輩 者 が、みなさんに比べれば笑っちゃうくらい 若 い ア タ シ が、礼儀をわきまえず生意気な振る舞いをしたこと、お詫びします!サーセンした!」
え……ちょ……弥生さん?
やたら若いとかそういったこと強調してますけど……確かにここの霊達生きてたら相当なシルバー軍団になるけど、享年でいえば弥生さんより年下もいる訳で……って、ま、いっか。
「それから……まぁ、ここから少しだけ真面目な話を。生前は医療を通してたくさんの人を救い、死して尚、成仏せずに現世に残り、悪霊という汚名を被っても、ここに来る若者達を守ってくれて、救ってくれて、本当にありがとうございました。あなた方がいなかったらこの廃病院は、マジ、ヤバかったことでしょう」
確かにそうだ。
この廃病院内で死者ゼロ、怪我人ゼロ、火災ゼロ、これはすべてこの霊達のおかげなのだ。
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