第九章 霊媒師 弥生ー2

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すると弥生さんと社長が顔を見合わせ、微かに頷き合ったあと、 「終わったわ。あんた達……命拾いをしたね。私達が来なかったら、確実に向こうに連れていかれてたよ」 「そうだぞ、ここにいた霊はとてつもない悪霊達で、ベテラン霊媒師3人がかりでなんとか滅することに成功したんだ。アイツなんか除霊の最中、院長の霊に臓器の一部を取られてしまってな、ああ見えて瀕死状態だ」 えぇ!? 僕ですか!? ババーンと社長が僕を指差し、アイツはいつ倒れてもおかしくないとワザとらしく涙ぐんでいる。 僕はとりあえずアドリブきかせて、お腹を押さえて唸ってみたのの……なんですか? この小芝居は。 「さっきまで元気そうに見えたけど……あの人、臓器取られちゃったんですか……? その……院長の幽霊に……? 嘘でしょう……? 怖っ!」 半信半疑ではあるものの、実際に血塗られた看護師の霊を目にしている3人は、薄気味悪そうに僕を見ている。 「そうだ、服で傷は見えないが実はザックリやられてる。おまえらが避難したあと悪院長にメスで腹を裂かれてな。無残にも虫垂を持っていかれたんだ……!」 「チュウスイ!? ……オイ、チュウスイってなんだ? 内蔵でそんなトコあったっけ?」 「いや……ないんじゃないか? だって内蔵って、だいたいナントカ臓ってつくだろ?」 「だよなぁ、チュウスイって……まさか虫垂のことか? あの人盲腸だったの? だとしたら取ってもらって、かえって良かったんじゃないか?」 3人の若者達がザワついてきたところで、しゃがれた大声に仕切り直された。 「とにかく! いい?こういう場所に興味本位で近づくのは危険なの。たまたまアタシ達がお祓いに来てたから良かったものの、下手すりゃ死んでただろうね。いいの? その若さで悪霊に腹を裂かれて無残に死んで、無念のあまり成仏も出来ずに今度はあんたらも悪霊になる……ま、そうなりたいから放っといてくれってことなら、もう、なにも言わないけどさ!」
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