第十章 霊媒師事務所の新入社員

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株式会社おくりび、事務所内、AM9:15。 4月上旬、春の陽射しはホカホカと暖かく、窓際の陽だまりにはオフィスチェアーで丸くなって眠る大福いる。 キャー!大盛り!カワイイ! 昨日は先日の廃病院の現場が徹夜勤務だったこともあり1日代休をいただいた。 社長に頼まれていた事務の求人の件でユリちゃんにラインをし、残る時間のすべてを大福とイチャイチャ過ごし、あっという間のお休みを満喫しての出社である。 「社長、ユリちゃんなんですけど、10時頃には出社してくれるみたいです」 僕はユリちゃんの面談準備で忙しい社長に声をかけた。 「お、そうか!ユリには早く仕事覚えてもらわねぇと、夏がくればウチの会社は繁忙期だ。積滞する依頼に俺も毎日現場に出なけりゃあ、とてもじゃないが捌ききれん。その頃までにはユリ1人で事務を回せるようにしないとな」 なるほど、夏は繁忙期か。 フェイク幽霊かリアル幽霊の違いはあれど、遊園地のお化け屋敷とおんなじだ。 同じ幽霊を扱うという共通点がある。 夏か……その頃になれば僕も入社3か月をこえる。 いつまでも新人とは言えなくなるし、もしかしたら1人で現場入りなんてこともあるかもしれない……もっともっと頑張らないとな。 「そういえば、先代は今日は来ないんですか?」 「あぁ、ジジィはユリを迎えに行くんだと。駅から真っ直ぐ100mのここまで迷いようもないと思うんだがな」 「あははは、先代も過保護ですねぇ……って、もう行っちゃったんですか?迎えに行くの早くないです?」 「まぁな、早えな。たぶんアレだろ。駅前でジジィの姿が視えるヤツがいないか物色してんじゃねぇか?姿が視えりゃあ霊力持ちだ。その中でも霊力(ちから)が強くて見込みがあれば霊媒師にスカウトする気満々なんだろうよ」
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